e育児と介護の世話 ダブルケア対策を工夫

  • 2017.07.04
  • 生活/生活情報

公明新聞:2017年7月4日(火)付



堺市の取り組みから



晩婚化に伴う出産年齢の上昇を背景に、育児と介護を同時に行う「ダブルケア」の当事者となる人(ダブルケアラー)が増えており、約25万人に上るとされています(2016年内閣府調査)。ダブルケアラーを支えるため、全国的にも珍しい専用相談窓口を設置した堺市の取り組みを紹介します。


全区役所に専用相談窓口


課題の「見える化」に貢献

政令市である堺市は、介護に関する相談を七つの行政区役所にある「基幹型包括支援センター」と「地域包括支援センター」(計21カ所)で対応。一方、子育ての相談は七つの区役所の子育て支援課が受け付けてきました。

地域包括支援センターでは、介護保険や介護予防事業、介護予防サービスに関する相談のほか、成年後見制度の活用や虐待防止、消費者被害の防止を含む権利擁護などに対応。保健師や看護師、主任ケアマネジャーが相談に応じてきました。

子育て支援課では、保育所への入所や児童手当の手続きのほか、虐待防止、DV(ドメスティック・バイオレンス=夫など親しい間柄にある者からの暴力)などの女性相談、ひとり親家庭の相談などに対応。保育士、保健師、子育て支援コーディネーターらが相談を受けてきました。

介護と子育ての両方を担う人が少なくないと見た市は昨年10月、七つの区役所の基幹型包括支援センターに「ダブルケア相談窓口」を開設。複数の分野に関わる問題を抱えた人が、適切な相談を受けられる体制を整えました。開設以降、これまでに117件の相談を受けました。

市によると、「児童虐待の相談をしていた人が、介護の問題も抱えていた」「DVの相談に来ていた人が、子育ての悩みを持っていた」などのケースがありました。

市の担当者は、「関係する部署同士が集まり、情報共有が図られるようになった」とメリットを説明します。また、担当者は「ダブルケアラーがいずれか一方の問題でしか相談を受けていないケースがあり、詳しく聞く中で、もう一方の問題を"見える化"させることができる」と話しました。


実態調査でニーズ把握


福祉制度の改善に生かす

ダブルケア相談窓口の設置に先立ち、堺市は昨年7、8月、関西大学と協力してダブルケアの実態調査を実施しました。

調査対象者は18歳以下の子どもや孫のいる保護者と、要介護認定の申請者の計7165世帯。1448世帯から回答を得ました(回答率20.2%)。

「子育てのみ世帯」「介護のみ世帯」「子育て・介護(ダブルケア)世帯」の三つに区分して分析を進めたところ、「子育てのみ」「介護のみ」よりも「ダブルケア」の世帯の方が「制度が充実している」と答えた人の割合が低いことが分かりました。

また、どうすれば仕事を辞めずに子育て・介護を継続できると思うか尋ねたところ、ダブルケア世帯では「保育施設や介護施設への優先入所」「子育て支援・介護サービスの充実」などを挙げる人が多くいました。

これを受けて市は、特別養護老人ホームの入所判定基準を変更。ダブルケアがある場合は加点し、入所しやすくしたほか、ショートステイ事業についても、介護者がダブルケアをしている場合は利用日数を年間7日間から30日間に拡大しました。

一方、子育てでは、保育所の入所要件に関して、要介護度1以上の介護をしている場合はポイントを加点し、子どもを預けやすくするなどの対策を取りました。


公明、対応を強化

公明党女性委員会(古屋範子委員長=副代表、衆院議員)は15年11月、ダブルケア支援を盛り込んだ「第4次男女共同参画基本計画策定に向けての提言」を政府に提出し、内閣府調査(16年)の実施につなげました。

また、公明党は16年4月に政府に申し入れた「ニッポン1億総活躍プラン策定に係る提言」でダブルケアへの対策を主張。党女性委は「ダブルケアと仕事の両立」を17年の活動方針に掲げ、取り組みを強化しています。

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