e改正児童福祉法 虐待の悲劇繰り返さぬために

  • 2017.06.20
  • 情勢/解説

公明新聞:2017年6月20日(火)付



改正児童福祉法 虐待の悲劇繰り返さぬために

改正児童福祉法が先の通常国会で成立した。虐待から子どもを守るため、家庭裁判所の関与を強めたことが柱だ。悲劇が後を絶たない現状を何とか変えていきたい。

厚生労働省によると、2015年度に全国208カ所の児童相談所が対応した児童虐待の件数は、調査開始以来、初めて10万件を超えた。10年間で3倍の増加だ。中には幼い命が失われるケースさえある。事態は深刻である。

虐待を受けている疑いが強い子どもを守る手段として、保護者の同意なしで子どもを児童相談所に避難させる「一時保護」がある。しかし実際には、保護者の強い抵抗に遭い、思うように保護できないことも多い。

このため今回の法改正では、一時保護の是非を家庭裁判所が決められるようにした。抵抗する保護者に対し、いわば"裁判所のお墨付き"を示すことで、児童相談所の取り組みを後押ししようとするものだ。取り返しのつかない事態を未然に防ぐための対策の一つとして評価できよう。

養育環境の改善が見込まれる場合に限り、保護者へのサポートを強化した点にも注目したい。これは、一時保護をする前に保護者に指導するよう家庭裁判所が都道府県を通じて児童相談所に勧告するという仕組みだ。この勧告は保護者にも通知される。

通学や外出が制限される一時保護は子どもの負担が大きいだけに、指導で保護者を立ち直らせ、子どもが安心して家庭で暮らせるようにすべきことは言うまでもない。

児童虐待が増加するのはなぜか。背景の一つとして指摘されるのが、子育て世帯の孤立化だ。「子どもが言うことを聞かない」「発育が遅いのではないか」など育児不安は尽きない。近くに相談できる人がいれば、虐待防止につながるのではないか。

子育て世帯を応援する取り組みが各地で活発化している。育児ストレスが虐待を招くことがないよう専門の相談所を設けたり、若い母親が利用しやすいようSNSを使った相談に応じる自治体や民間団体もある。

行政をはじめ地域全体で子育て世帯を見守り、支援する視点が虐待防止に欠かせないことも指摘しておきたい。

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