e米パリ協定離脱 国際社会と連携し、翻意促せ

  • 2017.06.06
  • 情勢/解説

公明新聞:2017年6月6日(火)付



持続可能な環境保全への責任を放棄するかのような「自国第一主義」は許されない。

トランプ米大統領は、190カ国以上が合意した地球温暖化防止の枠組み「パリ協定」からの離脱を表明した。

温暖化のさらなる進行は、海面上昇や異常気象などによる被害を拡大させる。世界の平均気温が3年連続で過去最高を更新する中、対策は各国が協力して最優先で取り組むべき喫緊の課題であることは言うまでもない。

ところが、中国に次ぐ世界第2位の温室効果ガス排出国である米国の離脱は、パリ協定が掲げる「地球の平均気温の上昇を産業革命前と比べ2度未満にする」という目標達成への歩みを大きく後退させるものだ。かねてからトランプ氏が主張していたとはいえ、離脱は到底容認できない。

日本を含む各国が即座に懸念や非難を表明しただけでなく、全米の自治体や企業にも離脱に反発する動きが広がっている。世論調査では米国民の圧倒的多数が協定に参加すべきとの立場だ。当然だろう。

日本政府は国際社会と連携し、パリ協定への残留を米国に強く働き掛けるべきだ。今月予定される先進7カ国(G7)環境相会合や、7月の主要20カ国・地域(G20)首脳会議で翻意を促してほしい。

トランプ氏は「他国に利益をもたらし、米国の労働者には不利益を強いる」と、離脱の理由に経済面の悪影響を挙げた。しかし、環境対策と経済成長の両立は、今や世界的な潮流である。再生可能エネルギーや電気自動車などの分野で既に多くの雇用が創出され、今後も拡大が見込まれる。この点は、米国にも大きなメリットであるはずだ。

米国の後を追って離脱する国が出ることも懸念される。とりわけ途上国に動揺が広がることを防がなければならない。欧州連合(EU)と中国は引き続き温暖化対策で協力することで一致しているが、日本も連携し、環境分野での技術供与など途上国支援に力を入れる必要があろう。

ともあれ、各国が苦労して築いた国際協調の枠組みを維持しなければならない。重要な国際協定からの離脱は、国際社会における立場を自ら放棄するものだ。米国はこの点を早く理解する必要がある。

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