e専門職大学 教育の質の確保に万全期せ

  • 2017.05.26
  • 情勢/解説

公明新聞:2017年5月26日(金)付



人口減少による労働力不足が懸念される中、IT(情報技術)や観光など今後も成長が見込まれる分野の人材をどう育成、確保するか。この課題に対する取り組みとして期待したい。

高い専門性と柔軟な発想力を兼ね備えた職業人の育成をめざす高等教育機関「専門職大学」の創設を盛り込んだ改正学校教育法が24日、成立した。2019年4月から開学が可能になる。大学制度に新たな教育機関が加わるのは、1964年の短期大学以来、55年ぶりだ。

専門職大学では、▽プログラミングの技術を他分野と連携して新たな企画を提案する▽観光分野でサービスの向上や旅行プランの開発に取り組む―などの能力を身に付けることを想定しており、"即戦力"輩出の場として、産業界の期待は大きい。

ただ、見逃してはならないことは、高等教育を希望する若者にとって選択肢が広がるという点だ。

職業教育のための高等教育機関としては専門学校がある。これに対して専門職大学は卒業すると「学士」の学位を取得できることが特徴だ。

進学先の検討に際し、職業教育を重視するか大卒の経歴を優先するかで迷うこともあるだろう。興味のある分野に関して実践的な能力を身に付けることができ、学士の学位も取得できる専門職大学は、こうした若者に新たな進路を提供する点で意義がある。

社会人が学びやすい仕組みにも注目したい。

専門職大学では、4年間を前期と後期に分け、前期を終えて就労し、後期から学業を再開することも可能だ。また社会人としての実務経験を単位として認定する制度も設けた。キャリアアップの場としても活用できよう。

課題も指摘しておきたい。

何より優先すべきは教育の質の確保だが、この点で文部科学省は、卒業単位のうち3~4割は企業の実習に充て、教員の4割以上を実務家とすることを省令で義務付ける方針だ。ただ、単なる数合わせにならないようチェックが必要ではないか。

学生の意欲やニーズに的確に応えた質の高い教育を提供できるかどうか。この点に新制度の成否がかかっている。

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