eフランス大統領選 EU瓦解の危機ひとまず回避

  • 2017.05.09
  • 情勢/解説

公明新聞:2017年5月9日(火)付



欧州連合(EU)の行方を左右するといわれたフランス大統領選で、EUとの関係強化を訴えるエマニュエル・マクロン前経済相が、EU離脱を主張する極右政党・国民戦線(FN)のマリーヌ・ルペン候補を破って、勝利した。

昨年6月に英国が国民投票でEU離脱を決めて以来、EUの存在意義が問われ続けている。その中にあって、フランスはEUを創設当初から支えている原加盟国の一つだ。

それだけに"親EU派"のマクロン氏が負けていれば、EUが一気に瓦解する可能性さえあった。マクロン氏がフランスの次期大統領に選ばれたことで、欧州の混乱をひとまず避けることができたといえよう。

既に焦点は6月のフランス国民議会(下院)選に移っている。マクロン氏は議会に基盤を持たない。そのため、自身が立ち上げた政治組織「前進」から候補を擁立し、過半数の獲得をめざす。

しかし、定数577の国民議会選に向け、前進がこれまで公表した候補はわずか14人にとどまる。

フランスでは国民議会の多数派から首相が選出されるのが通例だ。大統領の出身母体とは別の政党が議会の多数派になれば、「コアビタシオン」と呼ばれる"ねじれ"が生じる。そうなると、大統領と首相がたびたび対立し、政治の停滞を招きかねない。

そのことに失望した国民が、改めてFNに期待することもあり得るだろう。ルペン氏は決選投票で完敗したが、得票率は3割以上で1000万人以上の支持を集めた。

フランスの失業率は約10%(2017年3月現在)で、欧州単一通貨ユーロの導入国の平均9.5%を上回る。欧州統合のプロセスに伴うグローバル化に対応できず、貧困に陥った労働者の中には、ルペン氏の主張に賛同する人が少なくないことを忘れてはならない。

フランス国立人口学研究所の著名な歴史人口学者、エマニュエル・トッド氏によると、世界は「グローバル化疲れ」の時代に突入しているという。マクロン氏が安定した政権基盤を築くには、政策の実現でグローバル化に不満を持つ人たちからも支持されることが重要であろう。

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