eがんの緩和ケア 高まるニーズにどう応えるか

  • 2017.04.19
  • 情勢/解説

公明新聞:2017年4月19日(水)付



厚生労働省の協議会は、2017年度からの6年間を対象にしている第3期がん対策推進基本計画の概要を公表した。がんは日本人の2人に1人が生涯のうちにかかる、「国民病」とさえ言われている。今夏の策定に向けた議論を注視したい。
概要で示された対策の柱は「予防」「医療の充実」に加え、患者の就労支援などを見据えた「がんとの共生」の三つだ。特に注目されるのが、「がんとの共生」に関して重点分野に指定された「診断時からの緩和ケア」である。
緩和ケアとは、患者の痛みやつらさを和らげるための措置のこと。かつては末期のがん患者を主な対象にしていたというイメージが強かったが、近年は治療の初期段階から行うことで患者の療養生活の質を高めることに役立っている。このため公明党も、治療開始時からの緩和ケアを強く推進してきた。
国は07年の第1期基本計画から緩和ケアを重点課題に位置付け、がん拠点病院への専門部門の整備や医師の研修会の開催などを進めてきた。
それでもなお、高まるニーズに追いついていないのが現状だ。実際、第2期基本計画の中間評価は、「苦痛の緩和が十分に行われていないがん患者が3~4割ほどいる」と指摘している。
緩和ケアの提供体制をどう拡充するか。次期基本計画の策定に向けた重要な論点であることは言うまでもない。
緩和ケアは、専門医のほか精神面のサポートをする臨床心理士や、生活面の相談に乗るソーシャルワーカーらがチームを組んで行う。この点、今回の概要が専門の知識や技術を習得した医療従事者の育成、相談体制の整備に言及していることは評価できよう。
「痛みがある」患者を1割以下にするとした目標を初めて設定したことも見逃せない。その実現には、長期にわたり適切なケアが提供される受け皿づくりが何よりも急がれる。緩和ケア施設の整備が進むような対策を検討していくべきだ。
がんの予防や治療研究を総合的に推進するがん対策基本法が施行されて丸10年。心身にわたる患者の痛みを少しでも取り除ける環境づくりを進めていきたい。

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