eシリア化学兵器 使用は非人道的、許されない

  • 2017.04.10
  • 情勢/国際

公明新聞:2017年4月8日(土)付



シリアでまたしても非人道的な化学兵器が使われた疑いが濃厚となっており、看過できない。

同国北西部のイドリブ県は、アサド政権と6年に及ぶ内戦を繰り広げている反体制派が支配する地域。ここで4日、空爆があり、少なくとも80人以上が死亡し、350人以上が負傷したという。

現地を撮影したとされる映像には、目を見開いたまま動かなくなった子どもや、激しくけいれんしながら口から泡を吹く人の様子が映し出されている。見るに堪えない、あまりにも恐ろしい光景だ。化学兵器特有の症状であると見られ、断じて許されない。

米国は、この空爆をアサド政権軍によるものであると断定し、対抗措置として巡航ミサイル59発をシリアの空軍基地に発射した。シリア国営通信によると、シャイラート空軍基地に損害が出たという。同空軍基地は、化学兵器の使用が疑われる攻撃に関わった戦闘機が離陸した基地であると米メディアは伝えている。

米軍がアサド政権軍を攻撃したのは初めて。シリア情勢にどのような影響を及ぼすのか、今後の推移を見守りたい。

アサド政権と、同政権の後ろ盾となっているロシアは、反政府勢力の武器庫に化学兵器があり、それがアサド政権軍の空爆により爆発し、毒ガスが飛散したからであると主張、責任は反体制派にあるとしている。

米国とアサド政権側の主張は真っ向から対立しているが、忘れてはならないのは、シリアは今や、化学兵器禁止条約の加盟国であるということである。

2013年にシリアの首都ダマスカス近郊で化学兵器が使われ、数百人が死亡した際、国際社会の厳しい非難にさらされたシリアは、同条約に加盟した。翌14年には化学兵器の材料となる化学物質を全廃したはずである。にもかかわらず、なぜいまだに化学兵器が使われているのか。

化学兵器禁止条約は、化学物質の兵器への転用防止も加盟国に義務付けている。その義務をシリアは果たしていないことは明白だ。アサド政権と反体制派は、現在進められている和平プロセスで、同条約の順守体制の確立についても話し合うべきである。

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