e産後うつ予防 育児への不安、和らげる環境を

  • 2017.03.29
  • 情勢/解説

公明新聞:2017年3月29日(水)付



育児の不安や重圧から出産後に心身が不安定になる「産後うつ」。取り返しのつかない事態を避けるためにも、母親をサポートする体制づくりを進めたい。

産後うつは、出産した女性の1割が経験するとされ、特に産後2週間までの発症リスクが高いという。症状が悪化すると、自殺や子どもへの虐待につながる恐れもある。

実際、産後うつなどが原因で自殺する割合は、出血などによる妊産婦死亡率の約2倍に相当するという調査もある。見過ごすことのできない深刻な実態といえよう。

産後うつは、出産後の急激なホルモンバランスの変化をはじめ、育児によるストレスや疲労が原因となり、意欲の低下や不眠といった症状を引き起こす。

ましてや、近年増えている高齢出産であれば体力面での負担もより大きいであろう。核家族化が進み身近に頼れる人がなく不安を増幅させていることも想像に難くない。

孤立しがちな母親を心身両面からどう支えていくか。

この点で注目したいのは、市区町村単位で実施している「産後ケア事業」だ。これは授乳指導など退院直後の母子をきめ細かくサポートするもので、育児に奮闘する母親の力強い味方となっている。

ただ、実施している自治体は2016年度で全国の1割程度の約180市区町村にとどまっている。

このため政府は、産後ケア事業を実施する自治体を対象に、17年度から産後うつを予防するための健診費用の助成に乗り出す。27日に成立した17年度予算に3.5億円が盛り込まれた。

健診では、産後2週間と1カ月の2回にわたり、母体の回復や授乳の状況を把握し、子育て相談にも乗る。母親の心身の状態によっては、産後ケア事業の宿泊型や通所型のサービスなど必要な支援につなげていく。

今回の予算措置を契機に、産後ケア事業の普及に弾みがつくことを期待したい。

産後ケア事業の実施には至らないが、育児に関する相談窓口の設置などの対策に取り組んでいる自治体は増えている。ささいな疑問や悩みを気軽に相談できる環境づくりを着実に進めてほしい。

月別アーカイブ

iこのページの先頭へ