e「命の大切さ」学んで

  • 2017.03.24
  • 情勢/解説
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公明新聞:2017年3月24日(金)付



17年度 がん教育が本格化
協議会設置し 専門医の積極活用を
東京女子医科大学 林和彦がんセンター長に聞く



文部科学省は2017年度から、がんに対する正確な理解を深め、命の大切さを学ぶ「がん教育」の全国展開をめざした取り組みを本格化させる。がん教育の効果や求められる対応などについて、各地の学校で授業に携わってきた東京女子医科大学の林和彦がんセンター長に聞いた。


子どもに啓発効果大きい


――がん教育の意義は。


林がんセンター長
がんは、日本人の2人に1人が生涯のうちに患う「国民病」である。その原因や予防、検診、治療法などの正しい知識を伝えるだけでなく、命についても考えさせることができるのが、がん教育だ。がん教育を通して、自分の命を大切にすることを学んだ子どもたちは、他人の命を思いやり、いずれは国の将来をも考えられる人材になるだろう。

ただ、がん教育といっても、保健体育の一環として、生活習慣の改善に焦点を当てる学校もあれば、道徳教育として命や心の問題に重きを置く学校もある。一定の基準は必要だが、地域や学校の実情に応じた柔軟な姿勢が大切だ。


――がん専門医を外部講師とした授業も一部で行われている。


学校の教員だけの授業と比べて、がん専門医を外部講師として活用すれば、医療現場での経験に基づいた話ができ、子どもたちが実感しやすくなる。教育効果は大きい。

例えば、私が外部講師として授業を行っている都内の小学校では、「がんって何」という話から始め、早期発見と早期治療の重要性や、受動喫煙を含めた生活習慣のリスク(危険性)と同時に、患者さんの体や心のつらさについても、一緒に考えるようにしている。

授業を受けた子どもたちからは、「『死ぬ、怖い』や『治らない』というだけだった、がんのイメージが変わった」「がんを身近な病気だとして捉えられた」といった声が寄せられている。また、がん教育を受けた子どもが家族の方に「検診を受けてほしい」と伝え、がん検診の受診率向上につながったケースもある。


――全国展開をめざす上での課題は。

現在、がん教育に取り組む学校は増えつつあるが、個々のがん専門医や学校、教員の熱意や努力に頼っている部分が大きく、それだけに、一部の学校や地域に限られてしまっている。

現在、改訂中の中学校の学習指導要領案には「がん」が初めて明記される見込みだ。学校教育での根拠ができ、全国展開を着実に前進させることができる。こうした環境づくりを進めていかなければならない。


――学校への支援は。


教員向けの研修会の開催や外部講師の派遣など、きめ細かな支援が欠かせない。

ある自治体では、がん専門医と医師会、学校、行政関係者らによる「がん教育推進協議会」を設け、連携している。このような協議会の設置により、外部講師と学校側を円滑に結び付ける工夫も要る。

また、外部講師となる医師やがん経験者の確保が容易でない地域に対しては、テレビ会議システムなどを通した遠隔教育授業や映像データの利用を検討するのも一案だ。


――公明党は、がん教育の推進に力を入れている。


公明党は、がん対策で、さまざま尽力してくれており、人間の命を守る政策に取り組んでいる政党だと感じている。

今月14日には都議会公明党が議会質問で、がん教育推進協議会の設置を提案し、都側から「協議会を新たに設置して、外部講師の効果的な活用方法や連携体制のあり方について、区市町村教育委員会や学校に周知していく」との答弁を引き出してくれた。ありがたい。

がん教育で学校と医療の連携の場を作るのは、教師と医師だけでは無理だ。政治の力強い後押しをお願いしたい。


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