e学校トイレの改善急げ

  • 2017.03.15
  • エンターテイメント/情報
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公明新聞:2017年3月15日(水)付



洋式化は4割どまり
健康被害防止へ整備加速
生徒からは「安心」の声
横浜市



今なお「臭い・汚い・怖い・暗い・壊れている」の"5K"と呼ばれるトイレが多数を占める学校トイレ。公立学校では限られた予算の中で、トイレの洋式化など整備が後回しにされがちだが、子どもたちが使い慣れている洋式便器への改修を積極的に進める自治体がある。横浜市や東京都の取り組みを紹介する。

文部科学省が昨年11月に発表した調査結果によると、全国の公立小中学校にあるトイレの便器は約140万基あり、そのうち洋式便器は約61万基で、全体の43.3%にとどまる。都道府県別で見ると、便器の洋式化率が高い順に神奈川(58.4%)、沖縄(54.7%)、山梨(54.4%)が続く。政令市別では横浜市が72.6%で群を抜いている。

トイレの改修工事が進む横浜市保土ケ谷区の西谷中学校(村越茂雄校長)を訪ねた。中庭をコの字で囲むようにA~C棟に分かれた4階建の校舎。同校は2015年9月、南側に位置するA棟の各階にあるトイレに洋式便器を設置、体育館には多目的トイレを整備した。

村越校長は「以前から、使い慣れない和式便器に戸惑う子どもが多く、衛生面で課題となっていた」と語る。改修後、生徒からは「安心して利用できるようになった。暗い雰囲気だったトイレが明るくなった」との声が寄せられているという。今後、同校ではB、C棟にあるトイレも順次、洋式化を進める方針だ。

横浜市は、03年度から洋式化を含む学校トイレの改修事業を進めており、特に15年度から17年度までの3年間で全市立学校のトイレ洋式化率100%(最低でも80%)をめざしている。市教育施設課の担当者は「洋式便器の数が限られており、トイレに列ができる学校もあった。また横浜には外国籍の子どもが多いこともあり、洋式化を進めている」と語る。同市は現在、年間30校ほどだった改修ペースを40~45校に上げている。

一方で、洋式化率が都道府県別で全国1位の神奈川県では、16年度から新たに県立学校施設再整備計画(新まなびや計画)でトイレの洋式化を打ち出した。23年度までに県立学校約400棟のトイレを改修する予定だ。


都議会公明党が推進 都、17年度予算案で拡充

東京都の公立小中学校のトイレの洋式化率は国の調査で54.2%にとどまる。このため教育現場からは「トイレの環境改善を進めてほしい」との声が上がっていた。そこで、トイレ整備の重要性を訴えてきた都議会公明党は昨年12月、来年度予算編成に関し、小池百合子知事に直接、学校トイレの洋式化を要望。

これを受け、都は2020年度までに公立小中学校や都立高校などにあるトイレを80%まで洋式化にする方針を発表。都の17年度予算案で、学校や公共施設などのトイレ洋式化のために前年度の約5倍となる38億円を計上した。

一方、都内を見ると調布市が洋式化率91.4%を誇る。同市では市議会公明党の訴えが実り、早くから積極的に洋式化を推進。市内の設備会社で構成する組合と連携し、スムーズな工事を実施している。


地域防災拠点の学校を優先的に

文科省がトイレ整備に対する各自治体の方針を聞き取った結果、約85%が今後、和式便器よりも洋式便器を多く設置する考えを示している。同省によると、昨年4月に発生した熊本地震の被災地では、筋力が弱い高齢者などが地域の防災拠点となった学校に避難した際に和式トイレが使えないケースが見られ、トイレの洋式化が課題とされた。防災上の観点からも学校トイレの洋式化が求められている。


便秘、集中力の低下に影響


さいたま市立病院 中野美和子小児外科部長

2000年代に入り、子どもたちの便秘が増加している印象がある。重症化すると集中力の低下や食欲を無くすなどの健康障害が起きてくる。要因として、食事の洋食化のほか、学校や習い事のあわただしい毎日を送っており、規則的な排便の習慣付けができにくい状況が挙げられる。

また、家庭で洋式便器が普及する中、学校には老朽化した和式便器が多く、やむなくトイレの利用を我慢する子どもも多い。

さらに、和式トイレには大腸菌が多く検出されている調査結果もある。和式の清掃方法で多いトイレの床に水をまく湿式清掃が悪臭の原因にもなっている。

子どもたちの健康を守るために学校トイレの洋式化は必須で、自治体は清潔で明るいトイレへの改修を心掛けてほしい。

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