eコラム「北斗七星」

  • 2017.03.13
  • 情勢/社会

公明新聞:2017年3月13日(月)付



ふんだんに自然光を取り入れているから、室内は明るくて開放的。心安らぐ木の香りとぬくもりにあふれている。東日本大震災の発災から6年を前にして、宮城県東松島市に一つの新しい小学校が誕生した◆津波で甚大な被害を受けた野蒜地区、かさ上げ地にできた市立宮野森小学校である。東北産など5000本の木材を使ったオール木造が自慢。ずっと仮設校舎だった6年生を、せめて新校舎から送り出そうと、計画を前倒ししたと伺った◆復興の歩みは着実に進む。その半面、新たな課題が浮上している。子どもへの支援である。4日の党宮城県本部復興創生会議で講演した東洋大学の森田明美教授が、気になるデータを紹介した。震災後、県内における小学校でのいじめ認知件数が震災前に比べて激増し、不登校も増えているという◆被災地で子どもの調査活動を続けている同教授は「自分が、ここにいていい」という自己肯定感の低下を背景にした孤立化、コミュニケーション不足を指摘。生きることを支えてくれる大人の存在、社会的な支援を訴えた◆未曽有の体験をした子どもたちも、時の経過とともに記憶は薄れていく。だが彼らこそ、未来に向かって命の尊さを語り継いでいく主体者である。目には見えない心の復興への支えが必要な理由を気付かされた。(広)

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