e就活戦線 中小企業、人手不足に危機感

  • 2017.03.09
  • 情勢/解説

公明新聞:2017年3月9日(木)付



来春卒業予定の大学生らによる就職活動が今月、本格的にスタートした。面接や筆記試験が解禁される6月には事実上の内定が出る見通しだ。希望と不安を胸に進路を開こうとする若者たちに心からエールを送りたい。

今年の就活戦線は、景気回復基調を背景に企業の採用意欲が強いため、前年以上に学生が優位な「売り手市場」になると予想されている。

ただでさえ少子化によって学生の絶対数が減少傾向にある。企業にとって人材の確保は会社の存続・発展に直結する重要課題である。とりわけ中小企業の危機感は強いに違いない。

実際、リクルートワークス研究所が昨年行った調査によると、従業員300人未満の企業の求人倍率は4.16倍に達した。1人の新卒者に4社の求人があるということで、逆に言えば4社のうち1社しか採用できない計算になる。

現在の採用難は、日本経済が上向いている証左ではあるものの、中小企業にとっては死活的な問題と言わざるを得ない。

もとより「売り手市場」であるだけに、学生が大企業を優先するのは無理もない。しかし、国内企業の99%は中小企業であり、その人材確保をどう支援するかは日本経済を本格的な回復軌道に乗せる点からも喫緊の課題といえよう。

中小企業側は懸命に知恵を絞っており、フェイスブックなどのSNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)を活用した新しい方法を駆使して人材確保にしのぎを削っている。政府による支援策は、こうした点に着目することも必要ではないか。

折しも宅配最大手のヤマト運輸が、宅配便の基本運賃について、個人向けを含め全面的な値上げを検討していることが大きなニュースとして報じられたばかりである。値上げの理由は、インターネット通販の成長により取り扱う荷物が急増し、ドライバー不足が深刻化しているためだとされる。

大企業でさえ人手不足が経営に影を落とし始めている。ましてや体力の弱い中小企業への打撃は計り知れない。人材確保への強力なサポートが求められていることを強調しておきたい。

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