e受援力 災害時の支援、活用できる体制を

  • 2017.03.08
  • 情勢/解説

公明新聞:2017年3月8日(水)付



真心の支援を被災者一人一人に行き渡らせる。そのための備えを、平時から進めておきたい。

大規模な災害に見舞われた時、全国の自治体や企業、民間ボランティアなどが多種多様な支援に乗り出す。しかし、被災地の受け入れ体制が不十分であれば、せっかくの善意も生かすことはできない。

そこで問われるのが支援を受け入れる力、すなわち「受援力」である。

実際、東日本大震災の発災後、初めて迎えた大型連休では、泥のかき出しなどで人手が必要な被災者が大勢いた。にもかかわらず、自治体側が多くのボランティアに対応しきれず受け入れを断るケースが相次いだ。熊本地震では救援物資が滞留し、食料に事欠く避難所がある一方で、賞味期限切れのおにぎりが大量に廃棄された所もあった。

今では複数の自治体による広域災害連携は着実に進み、多くの自治体が相互応援協定を締結、被災地の要請を待たずに物資を届けるプッシュ型支援も定着するなど、非常時に応援に行く体制は整いつつある。災害ボランティアに関する国民の意識も高い。だからこそ、各地で「受援力」の高さが問われる。

そのためには何が必要か。カギとなるのが自治体で策定する「受援計画」だ。ただ、都道府県レベルでは策定済みが14府県にとどまっている。計画策定は防災対策の柱であり、市区町村も含めて積極的に取り組んでほしい。

参考となるのが、阪神・淡路大震災を経験した神戸市が2013年に定めた受援計画だ。緊急時は「応援受入本部」を設置し、他自治体などからの支援に関する窓口を一元化する。避難所運営や医療ボランティアの受け入れなど130の業務で、それぞれ「受援シート」も用意。指揮命令系統や執務スペースを細かくチェックできるようにした。

政府は12年に防災基本計画を修正し、受援計画の策定を初めて自治体に求めた。各地で実効性ある計画づくりが進むよう、国はノウハウの共有や人材支援を通じて後押ししてほしい。

自治体にあっては避難訓練と同様、受援計画に基づく訓練やシミュレーションの積み重ねも重要であろう。

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