e核分裂性物質の生産 兵器用禁じる条約の早期成立を

  • 2017.03.02
  • 情勢/解説

公明新聞:2017年3月2日(木)付



「核兵器のない世界」を実現するための「現実的かつ実践的な取り組み」として期待されている「兵器用核分裂性物質生産禁止条約」(FMCT)。国際社会は、その成立に向けた交渉を早期に始めてもらいたい。

日本は先月、アントニオ・グテレス国連事務総長より、FMCTについて議論する専門家グループに参加するよう要請された。25カ国の専門家で構成されるグループで、同事務総長の下に創設されている。日本からは佐野利男外務省参与(前国連軍縮代表部大使)を専門家として派遣することを決めた。

核兵器に用いられる核爆発装置を製造するには、濃縮度90%以上のウランと、純度95%以上のプルトニウムが必要とされる。これらを「兵器用核分裂性物質」とし、その生産を禁止するFMCTの成立は、核軍縮を間違いなく推し進めるという点で、大きな意義を持つといえよう。

ところが、FMCTの成立に向けた交渉の開始を求める国連総会決議が1993年に採択されて以降、実質的な交渉は行われないまま、現在に至っている。交渉の舞台を、軍縮について多国間で議論する場の一つである「ジュネーブ軍縮会議」(国連などの国際機関からは独立)としていることも関係しているだろう。同会議は全会一致を議決方式として採用しており、1カ国でも反対すれば交渉が進まなくなるからである。

とはいえ、FMCTが成立するまでの間、米、英、仏、ロの核兵器保有4カ国が、兵器用核分裂性物質の生産を自主的に停止すると宣言していることは高く評価できる。

この20年以上も動かなかった交渉を前に進めるため、国連が昨年設置したのが、事務総長の下に置かれた専門家グループである。日本には、同グループにおける議論をリードし、多くの国が交渉に参加できるよう論点整理を進めることが求められる。

FMCTでは、原子力発電などの民生用途で利用される核分裂性物質の軍事転用の禁止をめざしていることにも注目すべきだ。北朝鮮による核兵器開発は、60年代にロシアの協力を得て進められた原子力発電事業が発端となっていることを想起したい。

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