e下水施設のICT活用 省エネ、コスト削減につなげたい

  • 2017.02.21
  • 情勢/解説

公明新聞:2017年2月21日(火)付



下水道事業でもICT(情報通信技術)の役割が大きくなっている。

国土交通省は、ICTの活用で消費電力を20%以上削減できる水処理技術を自治体が導入する際に参考となるガイドライン(指針)をまとめた。市町村が主な運営主体の下水道事業は、ほぼ半数が赤字で、老朽施設の改修も厳しい。それだけに、コスト削減をめざした新しい水処理技術の普及に期待したい。

新システムのポイントは、送風機の省エネ化を実現したことだ。送風機は、主に下水処理に欠かせない微生物のために空気(酸素)を送り込んでいるが、下水処理施設の消費電力量のうち送風機が占める割合は5割に及ぶ。送風機がコスト削減の焦点となったのは当然といえよう。

新システムは、既存の下水処理場にセンサーによる制御技術を導入し、送風量を自動調節することで省エネ化を図るというもの。2014年から茨城、福岡両県で実証研究を進めた結果、消費電力の削減に大きな成果を挙げた。

これを全国の処理場に導入した場合、10年間に約1200億円のコスト削減効果が見込めると国交省は試算している。水道事業の経営難に悩む自治体にとって朗報であろう。また、ICTの活用は、維持管理業務の効率化も期待できるため、人手不足の解消という点からも自治体側の関心は高いのではないか。

国は、自治体の新システム導入を支援する計画だが、ガイドラインの周知を含め、丁寧な対応を求めたい。

ICTは、下水道の維持・修繕でも活用が期待される。

日本列島の地下には、地球11周以上に相当する約45万キロメートルにわたり下水管が広がっている。その維持管理だけでなく、敷設から50年以上経過した管の老朽化対策が急がれる。下水管の腐食を主な原因とする道路陥没も相次ぐ。

このため最近では、管内を調査するロボットや漏水を検知する装置などでICT活用の場が広がっている。

まして、水道事業を中核とする"水ビジネス"の市場規模は25年に世界で100兆円を超えるとされる。ICTを活用した下水処理技術の開発は、日本の成長戦略としても推進すべきであろう。

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