eコラム「北斗七星」

  • 2017.02.21
  • 情勢/社会

公明新聞:2017年2月21日(火)付



列島各地から「春一番」の便りが聞こえると、遠い春が待ち遠しくなる。東北では、それらしい風が吹くこともあるが「春一番」と呼ばない。北海道、沖縄でも「春一番」は発表しない◆雪に覆われた野山は、水墨画のようだが、春の訪れを待つ桜の枝には、美しい桜色が秘められている。ほんのりと淡いピンク色の「さくら染め」の染料は、"色彩の乏しい"枝を煮出して作られる。これから、つぼみが膨らむ前までの枝からは、濃い桜色が取り出せるという◆岩手県北上市で呉服店を営む佐藤敏孝さん(65)から教わった話。佐藤さんは20年前から、桜の名所・北上展勝地で、剪定や風で折れた小枝を拾い集め、ハンカチやショールなどの「さくら染め」を始めた。「爛漫と咲き誇る北上の桜を思い出して」と願いを込めて染め上げている◆桜の話題をもう一つ。同県陸前高田市では東日本大震災の津波到達地点を結んだ170キロ区間を桜の木でつなごうとしている。認定NPO法人「桜ライン311」(岡本翔馬代表)は毎年、春と秋の2回、植樹会を開催。これまで、延べ3517人が参加し、1088本を植えた◆多くの命が失われた悔しさから「津波が来たら桜並木より上に逃げて」と後世に伝承する植樹である。人々が桜に託した古里への想いをかみしめたい。(川)

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