e宇宙創生の謎に迫る 国際研究拠点の建設論議に期待

  • 2017.02.13
  • 情勢/解説

公明新聞:2017年2月11日(土)付



宇宙創生の謎に迫る研究拠点として世界中の注目を浴びる「国際リニアコライダー」(ILC)。その建設に向けた検討が、文部科学省を中心に進んでいる。科学技術立国をめざす日本にとって大きな意義を持つだけに、議論の行方を注視したい。

ILCとは、約100メートルの地下に30キロメートル以上もの長さの直線型加速器を設置するもので、素粒子の一つである電子と陽電子を光速近くまで加速させて正面衝突させる実験を行う。宇宙の始まりとされる「ビッグバン」を人為的に再現する実験として、世界中の研究者が高い関心を寄せているのは当然といえよう。

現在、文科省の有識者会議で建設に向けた課題の洗い出しが進められており、来月から新たな作業部会で管理運営のあり方が議論される予定だ。建設開始は2020年ごろを見込む。

焦点の一つは建設場所だ。候補地として岩手県や宮城県などに広がる北上山地が挙がっている。昨年11月に公明党岩手県本部が開いた政経懇話会で山口那津男代表も東北誘致の必要性に触れている。

東北地方に建設されれば、国際的な研究都市のにぎわいも生まれよう。建設に伴う雇用創出効果も期待できる。東日本大震災からの復興にも弾みがつくのではないか。

難題は、総額で約9000億円にも上るとされる建設資金の調達だ。

ILCは国際的な計画であることから、土木費以外の実験装置の開発費は欧米など関係国と共同で支出することを想定している。ただ、米国が実利につながらない科学研究に消極的な姿勢をみせており、資金調達の先行きは不透明だ。今後、日本のリーダーシップが問われる局面も予想される。

宇宙研究は日常生活と縁遠いように思われがちだ。しかし、住宅などに使われる断熱材が、ロケットを打ち上げる時の高熱から人工衛星を守る技術の応用であるように、科学の成果は日常生活に恩恵をもたらすことが少なくない。

ILCについても、医療や情報・通信、エネルギーなど多彩な分野での応用が期待されている。こうした点からも国民の理解を得るための努力も重要であろう。

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