e炭素の価格化 温暖化対策の加速へ議論深めよ

  • 2017.02.07
  • 情勢/解説

公明新聞:2017年2月7日(火)付



地球温暖化を食い止めるため、石油や石炭などの化石燃料に依存する現在の社会構造を転換しなければならない。

昨年11月に発効した国際条約「パリ協定」により、加盟国は2050年までの温暖化対策を策定することが義務付けられている。日本は二酸化炭素(CO2)などの温室効果ガスの排出量を80%削減する目標を掲げ、長期戦略の検討を進めている。

こうした中、環境省が3日、戦略の基となる「長期低炭素ビジョン」の素案を公表し、柱の一つに「カーボンプライシング(炭素の価格付け)」制度の本格導入を掲げたことは注目に値する。

カーボンプライシングとは、CO2の排出に対して価格を上乗せする経済的手法で、主に「炭素税」や「排出量取引制度」がある。

発電事業を例にすれば、化石燃料から排出されるCO2に炭素税を上乗せすると電気料金は上昇する。電力消費の抑制や再生可能エネルギーへの転換が促され、温室効果ガスの削減が期待できる。

ただ、消費者や事業者にとっては負担が重くなることから慎重論が少なくない。しかし、世界中で頻発する自然災害や異常気象を見るまでもなく、温暖化対策は喫緊の課題だ。

世界銀行によると、カーボンプライシングは約40カ国、20以上の地域が導入または導入予定で、日本も化石燃料の利用に課税する「地球温暖化対策税」を12年に創設したが、同制度はCO2排出量1トン当たりの税額が世界的に見ても低く、排出削減効果は限定的だ。

日本が掲げている温室効果ガスの削減目標は極めて高く、カーボンプライシングの本格導入は目標達成の有効な手段となろう。

折しも、温暖化対策に消極的とされるトランプ米大統領の誕生がパリ協定の行方に影響を与えるとの懸念もある。世界第3位の経済大国である日本が国際社会に範を示すことが重要ではないか。

「長期低炭素ビジョン」は今年度中に取りまとめられ、4月以降に策定する政府の長期戦略に反映される予定だ。国民の理解と協力を得られるような実効性ある戦略となることを期待したい。

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