e検索結果の削除 「忘れられる権利」も議論すべき

  • 2017.02.06
  • 情勢/解説

公明新聞:2017年2月4日(土)付



インターネットの検索サイトに自分の名前を入力してみたという経験を持つ人は少なくないだろう。その結果、自分にとって不都合な情報がネット上に見つかることがあるかもしれない。

検索サイトの運営会社に検索結果の削除を求めた場合、会社側はこの要請に応じるべきかどうか。ネット社会における「プライバシー保護」と「表現の自由」を巡る問題について、最高裁判所が注目すべき決定をした。

2011年に児童買春事件で逮捕され、罰金の略式命令を受けた男性が、逮捕時の報道内容が検索サイトに表示されているのはプライバシーの侵害だとして、米グーグル社に検索結果の削除を求める仮処分を申し立てた。

これについて最高裁は、「情報を社会に提供する表現の自由よりも、個人のプライバシーが明らかに優越する場合は削除が認められる」との判断基準を初めて示した。男性の訴えについては「男性の逮捕歴は公共の利害に関する」として削除を認めなかった。

地裁と高裁で判断が分かれていた問題であり、今後も同様の訴えが増えることが予想されるだけに、最高裁が統一的な考え方を示した意義は大きいと言えよう。

ここで一つ指摘しておきたいのは、プライバシー保護の新しい考え方である「忘れられる権利」について最高裁の決定が触れていないことだ。

「忘れられる権利」は、ネット社会の進展に伴って生まれた。14年に欧州連合(EU)司法裁判所が初めて認めた権利で、ネット上にある一定の個人情報について、当事者が管理者に削除させる権利と定義されている。

日本では法律に明文化されていない。しかし、ネット情報は国境を越えて拡散する。EU内のサイトで削除されても、日本のサイトで情報が検索できるようであれば、人権が侵害される状況は解消されない。

最高裁が今回示した判断基準に照らせば、実質的に「忘れられる権利」が認められるケースはあるだろう。ただ、ネット上の人権を保護するためには、国際的に共通した基準作りが必要になる。

今後、この点についての議論も深めるべきであろう。

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