eメンテナンス産業 老朽インフラ対策を成長戦略に

  • 2017.02.03
  • 情勢/解説

公明新聞:2017年2月3日(金)付



橋や道路などインフラ(社会基盤)の維持や管理を通じて命と暮らしを守るメンテナンス産業を育成し、その国際競争力を高めたい。

2012年に中央自動車道の笹子トンネルで起きた天井板落下事故を契機に、インフラの老朽化は大きな問題となった。地震や台風など大規模災害も頻発する中、防災・減災の観点から老朽インフラ対策は待ったなしであり、メンテナンス産業の育成が急がれる理由もここにある。

先の参院代表質問で公明党の山口那津男代表も、メンテナンス技術という新たな産業の育成・活性化を訴えた。限られた財源の中でスピード感を持って取り組むべき課題だけに、官民の英知を結集する必要があろう。

その中核となる政府の「インフラメンテナンス国民会議」が昨年11月に発足している。産官学一体で、技術開発や企業・自治体の連携を進める態勢を強化してほしい。

メンテナンス産業は近年、成長産業としても注目を集めている。先進国を中心にインフラ老朽化が進む中、世界の市場規模は約200兆円と推計され、自動車産業を上回る。これを日本の成長戦略に取り込めないだろうか。

実際、インフラメンテナンスの分野で、日本の優れた技術は世界で十分に競争する力がある。老朽化した下水管を地中に埋設したまま再生する工法を開発した国内企業は、各国の下水管補修の分野で高いシェアを獲得している。世界をリードする革新的な技術の創出を後押ししたい。

その意味で、業種を超えた連携によって新たな価値を生み出す「オープンイノベーション」の視点が欠かせない。例えば、レーザー測量システムを小型化してドローンに搭載し、河川の水中形状の把握を安価かつ効率的に行うことによって、堤防の防災管理につなげるという研究が進められている。

こうした独創的な技術を生み出すには、国民会議を軸に幅広い分野の企業や人材を巻き込み、産業としての総合力を強化すべきだ。インフラメンテナンスへの関心や理解を深める努力も欠かせない。魅力ある産業として認知が広がれば、さらなる人材の糾合にもつながるであろう。

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