eコラム「北斗七星」

  • 2017.01.31
  • 情勢/社会

公明新聞:2017年1月31日(火)付



「大丈夫ですか。何かお手伝いすることはありませんか」。一人の若い女性が、白杖を持った初老の男性に声を掛けた。駅の改札口からホームに向かおうとしていた男性がうなずき笑みを浮かべると、乗車位置まで案内されていた◆都内のターミナル駅での出来事だったが、駅にはまだホームドアがない。目の不自由な方にとってホームは「欄干のない橋」を歩くような恐怖がある。盲導犬を利用する視覚障がい者への全国調査では、20人に1人が駅のホームから実際に転落した経験を持つ◆ホームからの転落による痛ましい死亡事故は後を絶たない。再発防止の柱であるホームドアは、1日の利用者が10万人超の全国260駅に限っても、178駅で未整備だ。国土交通省は昨年末、2020年度までに整備条件の良い約60駅から設置することを決めた◆それでも1駅数億円は必要とされる設置費用の問題もあって、整備には時間がかかる。当面はソフト面での対策が欠かせない。首都圏の鉄道各社などは駅員や利用者による「声かけ・サポート運動」を展開している◆掛け声が聞きとりにくいホーム上では、できるだけ大きな声で話し掛け、肩などをたたいて手助けしたいとの意思を伝えることが重要という。勇気の一声は視覚障がい者の"心のホームドア"になるはずだ。(辰)

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