eトランプ政権始動 不安拭えぬ「一国利益主義」

  • 2017.01.23
  • 情勢/解説

公明新聞:2017年1月23日(月)付



「アメリカ・ファースト(米国第一主義)」を掲げて、米国のトランプ新政権が始動した。

個々の政策の詳細が不透明で、政権内の人事も大きく遅れていることから、「米国第一」の"イズム"が今後、どう具体化されていくのか、全貌はまだ定かではない。

だが、大統領就任式で「米国を再び偉大な国にする」と言明した新大統領は、その直後に早速、環太平洋連携協定(TPP)からの離脱と、北米自由貿易協定(NAFTA)の再交渉を正式表明した。

第2次世界大戦後の世界経済を支えてきた自由貿易体制が大きく揺らいでいることを実感させるとともに、「アメリカ・ファースト」は選挙期間中の単なるパフォーマンスなどでなく、"本物"であることを見せつけた格好だ。

いったいに米国はどこへ向かうのか。伝統的な孤立主義、保護主義に先祖返りしてしまうのか。国際協調主義は後景に退き、「一国利益主義」「一国ナショナリズム」が前面に出てくることになるのか。不安は尽きない。

これまでのところ、新大統領は日米関係については、直接の言及をしていない。

ただ、多分に選挙戦を意識した"誇張表現"だったとしても、就任前には日米の基地協定に疑問を呈し、自前の核保有や在日米軍駐留経費の負担増を求める発言があった。

また、NAFTAの再交渉次第では、メキシコやカナダに進出している日系自動車メーカーなどが、少なからぬ打撃を受ける可能性がある。

「一つの中国」原則を見直す素振りを見せたことで中台関係に新たな緊張が生じ、日本が不利益を被る事態も想定される。

これら両国間に横たわる諸課題を解決し、さらには、揺れる自由貿易体制の立て直しを図るためにも、安倍首相は可能な限り早く首脳会談を開き、トランプ大統領との信頼醸成を図ることが肝要だ。

いみじくも首相が施政方針演説で強調した通り、日米同盟は今や、「不変の原則」として両国関係を貫いている。この強い絆を思えば、世界一の大国が一国利益主義に閉じこもる危うさを正面切って説ける国は、日本以外にそう多くはないことを自覚したい。

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