eコラム 「北斗七星」

  • 2017.01.23
  • 情勢/社会

公明新聞:2017年1月21日(土)付



葉室麟さんの小説に、小倉藩の御家騒動を描いた『風花帖』がある。剣の達人である主人公が重臣の渋田見主膳を襲い、刺殺する物語だ。主膳が刺客に襲われたのは事実だが、実際には槍が袴の上を滑り、無傷だったと伝えられている◆主膳がはいていたのは、通常の綿織物に比べて3倍の経糸で織られる小倉織だった。幅35センチの帯に用いられる経糸は、2200本。その密度が丈夫さを生み、龍馬も愛用した。製法上、縦縞にしか織ることができず、横や斜め柄で華美な博多織とは対象的に真っすぐな縦縞模様が特徴だ◆皮肉にも、北九州が支えた日本の近代化の陰で、小倉織は昭和初期に姿を消す。同市出身の染織家・築城則子さんが偶然に手にした端切れから、試行錯誤の末に復元したのは1984年になってからだ。経糸が多く織りにくいことについて、築城さんは以前、「妥協を許さない北九州人の思い」(西日本新聞)と語っていた◆その北九州を舞台に党員、支持者らは今、大激戦に挑んでいる。総定数4減の中で、2議席増、過去最高13議席への挑戦である。心意気に胸が熱くなる◆騒動の後、「槍をも通さぬ小倉織」は、全国の武士の間で袴や刀を差す帯として重用されたという。夏の首都決戦へと続く今年の大型地方選挙の緒戦を、断じて勝ち抜きたい。(也)

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