e英国のEU離脱表明 経済秩序の模索が始まった

  • 2017.01.20
  • 情勢/解説

公明新聞:2017年1月20日(金)付



英国は欧州連合(EU)からの完全離脱を選んだ。国民投票で決まったEU離脱について、メイ首相が初めて具体的な基本方針を表明した。2年後の離脱に向けた新たな経済秩序を探る動きの始まりであり、日本政府や企業は、世界経済に与える影響を注視して対応しなければならない。

EU離脱を決定的にした要因の一つは、移民の流入制限を実現するためだ。雇用を奪うと国民の批判が集まっていた。しかし、EU内では人の自由な往来の保障が認められ、自国の都合で移民の流入制限はできない。

この移民を含む人、モノ、資本、サービスの自由な移動を大原則とするEUにとって、移民流入を規制しながら経済的な結び付きは維持したいとの英国の主張が受け入れられないのは当然だろう。

国際社会が懸念した「ハードブレグジット(強硬離脱)」となったが、今後、さまざまな事態が想定される。

英国にとってEUは、輸出の半分を占める最大の貿易相手だ。英財務省は、離脱で英国経済が大幅に停滞すると予測。英国のみならず世界経済への影響が懸念される。

日本も深刻に受け止めなければならない。自動車関連の製造業や金融機関など約1000社の企業が、EU向けの営業拠点を英国に構える。EUでの経済活動が制限されれば打撃は計り知れない。

日本政府は昨年、現地企業への配慮を求める考えを英国に伝えた。これを受け、英国政府は予想外の影響を防ぐために激変緩和措置の実施を検討しているという。措置の実現に向けて、英国政府との連携強化が不可欠である。

メイ首相は3月にも始まる離脱交渉の中で、EU側と新たに自由貿易協定を締結して経済への悪影響を抑える考えも示した。だが、EU内には英国の特別扱いに慎重な姿勢をみせる国もある。特別な配慮が、自国最優先の経済論理を欧州全土で巻き起こす可能性があるためだ。

経済大国の英国と距離を置く対応は、EU経済にとっても得策ではないだろう。双方が歩み寄り、現実的な打開策を見つけることが重要ではないか。英国と欧州が開かれた市場を維持することを世界は期待している。

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