e不登校の子ども支えるフリースクール

  • 2016.12.22
  • 情勢/社会

公明新聞:2016年12月22日(木)付



居場所を見つけ笑顔に
触れ合いの中で将来の夢描く



今月7日、公明党の推進により、フリースクールなど、子どもたちの多様な学びの場づくりを進める「教育機会確保法」(議員立法)が成立した。これにより、不登校の子どもたちへの支援がさらに進むとみられ、関係者からは期待の声が上がる。そこで30年以上にわたり、不登校児を支える民間のフリースクール・NPO法人東京シューレ(奥地圭子理事長)の王子スペースを訪ねてみた。

「たこ焼き、うまく焼けたね」「ねぇ、みんな、食べようよ!」――。

教室に入ると、たこ焼き作りを楽しむ女子や、対戦型カードゲームで仲良く遊ぶ男子、そしてスタッフに寄り添いながら話し掛ける子どもなど和気あいあいとした雰囲気に包まれていた。一人一人が笑顔で積極的に取り組んでいる姿が目立つ。

現在、王子スペースに通う子どもたちは計94人(初等部12人、中等部20人、高等部62人)。平日の午前10時から午後5時半まで利用でき、各曜日の時間割の内容は毎年4月に、子どもたちが自由に話し合い、自主的に決めている。

中・高等部では、数学や英語などの科目のほかに、演劇や創作ダンス、イラストなどユニークな時間も設けている。また毎週木曜日を「いろいろタイム」の日としている。皆で話し合い、決めたことを実行する日で、訪れたこの日もいろいろタイムの日だった。

スタッフの佐藤信一氏は「ここは、いじめなどが原因で自己肯定感や自分の居場所を失った子どもたちが来る。だから、『あなたはあなたのままでいい』と伝えていけば、少しずつ"自分らしさ"を取り戻していく」と説明する。

千葉県から通う高等部2年目のA君は、中学2年生の時に、深刻ないじめがきっかけとなり不登校になった。約3年前に同スペースに来たころは、建物に入れないほどの対人恐怖症だった。その後、友達やスタッフと触れ合う中で自分の居場所を見つけ、今では「将来、コマーシャルの映像関係の仕事に就いてみたい」と、目標を持つほど前向きになった。

現在、高等部に通う62人のうち39人が、東京シューレが提携する通信制高校の、高卒資格が取得できるコースに所属し、将来を見据えている。

フリースクールをきっかけに、未来に向かって進む子どもたちの姿に、多くの家族から「自分の子どもが笑顔になっていく」との声がスタッフに寄せられている。


成立した教育機会確保法


公明の主張が反映

近年、不登校の小・中学生は増加傾向にあり、2015年度は全国で12万6009人に上った。その原因はいじめや友人関係をめぐる問題、学業の不振などと複雑多岐にわたる。体調を崩したり、中には「死にたい」と思い詰める子どもも少なくない。

このため、かねてから不登校支援の関係団体や保護者からは「学校以外の選択肢はないのか」「学校より命の方が大切だ」との切実な声が上がっていた。こうした背景から、教育機会確保法の成立は、関係者から「まさに待ち望んでいた法律だ」と反響を呼んでいる。

特に同法は、公明党の主張を反映して、フリースクールなど学校外での「多様で適切な学習活動の重要性」が明記されたことから、今後、各自治体が支援に向けて必要な措置を講じやすくなった。また、子どもの命や心の健康を守るために、学校を欠席する「休養の必要性」を盛り込んだことも大きい。さらに夜間中学については、就学を希望する人への機会の提供や、各地への設置促進などが規定された。

奥地理事長は「子どもが安心して学び続けられる場所を、自ら選択できる仕組みをつくるため、この法律は大きな一歩になる」と高く評価している。

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