eコラム「北斗七星」

  • 2016.12.20
  • 情勢/社会

公明新聞:2016年12月20日(火)付



ある運送会社の車は、いつも運転が荒く、住民に不安を与えていた。案の定、車は海に突っ込む事故を起こす。すると会社の上司が出てきて一言。「住民や住宅に被害を出さなかった運転手は表彰ものだ」◆これは架空の話だが、似たような事例が現実となった。米軍機オスプレイが13日、沖縄県名護市沖で大破する重大事故を起こした。在沖米軍トップのニコルソン四軍調整官は、操縦士を「県民を守った」「感謝されるべき」と称賛。逆に「機体の丈夫さが分かった」と評価した。県民感情をないがしろにした極めて不適切な発言である◆今回の事故は日米地位協定の壁も改めて浮き彫りに。日本国内で起きた事故であるにもかかわらず、事故機は「米軍財産」として守られ、米軍の許可なく日本側は捜査できないのだ。2004年の沖縄国際大学の米軍ヘリ墜落事故と同様、日本側は十分な捜査ができない恐れがある◆22日には米軍北部訓練場の過半が返還予定だ。だが六つのヘリ発着場が新設され、住民は墜落の危険性と隣り合わせの生活が今後も続く。これでは返還を手放しで喜べない◆大事なのは、事故の原因究明と再発防止、速やかな情報公開、住民を危険に晒す訓練の中止である。地位協定の見直しも必要だろう。住民を巻き込む事故が起きてからではもう遅い。(治)

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