e改正がん対策基本法 患者を温かくサポートしたい

  • 2016.12.19
  • 情勢/解説

公明新聞:2016年12月17日(土)付



がんと闘う患者への温かいサポートを社会全体に広げる契機にしなければならない。

国のがん対策の柱となる、がん対策基本法が改正された。2006年の同法制定以来、日本のがん対策は大きく前進し、かつての「不治の病」は「長く付き合う病」になったとさえいわれている。こうした中、新たな課題への対応が求められるようになり、公明党がリードして法改正が実現した。

課題の一つは、治療と就労の両立だ。働きながら通院治療するがん患者は約33万人に上る一方、がんを患った人の3人に1人が解雇や依願退職で職を失っている。中には、就労の継続が可能であっても職場の理解が得られず、やむなく職を辞したケースもあろう。

このため改正法では、がんになっても働き続けられるよう配慮することを事業主に求めている。具体的には、通院治療のための休暇制度や短時間勤務の導入などが想定される。法改正の趣旨に沿った企業側の努力を期待したい。

緩和ケアの強化も打ち出された。「治療後や終末期に行うもの」と誤解されがちな緩和ケアは、本来、がんと診断された時点から心と体の苦痛を和らげるものである。

緩和ケアによって患者が自分の人生に対して前向きになれば、治療効果も向上するとされる。それだけに、今後は専門人材の育成を急ぎ、がんと診断された時から適切なケアが行えるような体制づくりが求められる。

がん患者を社会全体でサポートしていく上で、がんに対する正しい理解を広げていくことが欠かせない。改正法に「がん教育」の推進が盛り込まれた理由もこの点にある。

学校教育では、既にさまざまな工夫が重ねられている。教材提供や研修などの面で政府の支援が望まれる。公明党も議員ネットワークを生かして各地の事例について情報交換し、各自治体での取り組みを後押ししていきたい。

忘れてならないことは、今回の法改正の趣旨が行政や医療機関、企業に周知されなければ、絵に描いた餅に終わりかねないことだ。来年夏の政府の「がん対策推進基本計画」策定に向け、この点についての論議も深めてほしい。

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