eコラム「北斗七星」

  • 2016.12.19
  • 情勢/社会

公明新聞:2016年12月17日(土)付



ユニークな弁当を紹介するテレビ番組を見ながら、おふくろの弁当を思い出した。卵焼き、キュウリの漬物、ウインナーがおかずの定番だったが、厳しい家計の中、苦労して作ってくれたのだと今は分かる◆弁当で思い出すのがタレント・毒蝮三太夫さんの話。疎開先で馬のエサであるコーリャンと麦を炊いたご飯を弁当に持たされる。それを見て悪ガキが「毎日赤飯食ってる」とはやす。炊いたコーリャンは赤茶色だから◆弁当をぶちまけケンカしてもいいなと毒蝮さんは思うが、弁当を作ったおふくろが悲しむと思い直し「昨日はおやじの、一昨日は戦地に行ってる兄の誕生日」とウソをついて弁当を平らげる◆ある日、一緒に帰宅した仲良しが、この出来事を毒蝮さんの母に伝える。その時、「おふくろ、俺の顔見て、うれしそうな顔して『ありがとう』、と言った気がした」と回顧する毒蝮さん(『人生の贈りもの』朝日新聞)◆<おふくろがつめてくれた弁当は/ふたをあけただけですぐわかるんだ/おかずのならべかた/小さい紅しょうがの置きかた/その上を往復したおふくろの指/めしの上にそれがちらつくんだ>◆サトウハチローの詩『おふくろがつめてくれた弁当は』。おふくろの弁当が懐かしいのは思い出という"隠し味"があるからかもしれない。(六)

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