e休眠預金の活用 支え合いの社会づくり進めたい

  • 2016.12.08
  • 情勢/解説

公明新聞:2016年12月8日(木)付



新たな制度が支え合いの社会づくりを力強く後押しすることを期待したい。

金融機関の口座で10年以上出し入れがない「休眠預金」を、民間の公益活動に活用できるようにする「休眠預金活用法」が成立した。超党派の議員立法で、公明党は党内にプロジェクトチームを立ち上げるなど議論をリードしてきた。

毎年1000億円ほどが新たに休眠預金となっているが、このうち約500億円は預金者から払い戻しの求めがなく、会計上は金融機関の利益として扱われている。

今回制定された法律では、この休眠預金を金融機関から預金保険機構に移管し、政府が指定した団体などを通じて、公益性の高い民間事業への貸付金や出資金として活用できるようにする。

具体的な活用先としては、子どもの貧困対策や地域活性化といった活動に取り組むNPO法人などが想定されている。こうした事業を後押しすることは、支え合いの社会づくりを進める上で大きな意義がある。

今後の課題は、預金活用時の透明性の確保であろう。とりわけ、預金の活用先の選定基準づくりが焦点となる。預金者のお金を使うからには成果も問われるだろう。来年から、内閣府の審議会で詳細な制度設計が行われる予定だが、国民に対して積極的に情報を公開し、広く意見を聞きながら制度の信頼性を高めてもらいたい。

一方、「本人の知らないうちに、勝手に預金が取り上げられる」と誤解している人も少なくないという。法施行後も預金者が返還を求めれば預金は払い戻される。政府や各金融機関は、国民に制度の内容を広く周知し、理解を促す努力が求められる。

そもそも、休眠預金となることを可能な限り抑える工夫ができないものか。休眠預金を既に活用している英国や韓国では、休眠口座の有無を個人が気軽に調べられるオンラインシステムを導入しているが、日本でも検討課題の一つであろう。

休眠預金が多い要因として、口座解約や払い戻し手続きの煩雑さが指摘されている。この点も改善に向けた議論を進めていくべきである。

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