eコラム「北斗七星」

  • 2016.11.30
  • 情勢/社会

公明新聞:2016年11月30日(水)付



認知症の高齢者を抱えた家庭の悩みを知ったのは、有吉佐和子さんの小説『恍惚の人』だった。70年代のことである◆今や75歳以上の世代が人口の1割以上を占める。その数は1600万人を遙かに上回り、平均寿命は男女いずれも80歳を超えている。介護者の人手不足が生じるのも、連日のようにマスコミを賑わせる高齢者ドライバーの交通事故が発生するのも、こうした超高齢社会だからであり、時代が生み出した現象だ。高齢者だけが責めを負っても問題が解決するものでもないだろう◆大事なのは課題にどう対処するかだ。『恍惚の人』に、自宅からいつの間にか姿を消した舅を、家族が捜し回る箇所がある。再発を恐れる家族は神経をすり減らし、眠れない日々を過ごすことになる◆しかし今は「消えること」を恐れるより「見つかること」に発想を転換する企業が出てきた。ある警備会社が幾つかの自治体で、認知症高齢者の居場所を知らせる感知器システムを検証中だ。高齢者の靴に位置を発信するタグを付け、周囲に自動的に情報を発信。これを自治体職員やボランティアが受信して位置を確認するシステムだ◆外を徘徊しても「見つかる」ことが分かっていれば家族の不安も取り除ける。超高齢社会をベースにした民間企業の知恵の出し合いを大いに期待したい。(流)

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