e中間貯蔵本体着工 「福島再生」加速への契機に

  • 2016.11.21
  • 情勢/解説

公明新聞:2016年11月21日(月)付



東京電力福島第1原発事故に伴う除染作業で出た福島県内の汚染廃棄物を保管する中間貯蔵施設の本体工事が、同県双葉町と大熊町にまたがる建設予定地で始まった。

既に事故から5年8カ月余り。県が建設受け入れを表明してからでも2年を過ぎる。「ようやくの着工」(伊沢史朗・双葉町長)との感は否めないが、県土回復の鍵を握る施設の建設に一定のメドが付いた意義は大きい。国を挙げて整備を進め、「福島再生」加速への契機としたい。

中間貯蔵施設は、第1原発を囲うように両町の敷地1600ヘクタールにつくる。最大で東京ドーム18杯分に相当する2200万立方メートルの廃棄物を保管する計画だ。

今回着工したのは、このうちの両町約7ヘクタールずつ。廃棄物の放射線量などを測定・分別する施設と、分別後の土壌を長期保管する貯蔵施設を両町に1カ所ずつ建てる。来年春に分別施設の試運転を行ったあと、同年秋には貯蔵施設が運用開始となる見通しだ。

ただ、今回建てられる貯蔵施設の容量は、両町合わせても12万立方メートル。最大保管容量の0.5%にすぎない。仮置き場や民家の庭など県内約15万カ所に置かれたままになっている1000万立方メートル超の汚染廃棄物の撤去と除染の進展のためには、施設全体の一日も早い完成が欠かせない。

建設が遅れている最大の要因は、地権者との交渉が難航し、用地取得が進まないためだ。先月末までに契約を結べた地権者は、全対象者2360人のうち445人にとどまり、面積にして1割程度(約170ヘクタール)でしかない。

事態を改善させるのに"特効薬"などあるまい。先祖伝来の土地を手放すことに抵抗を禁じ得ない地権者の心境に十分配慮しながら、国は施設の必要性を粘り強く、丁寧に説明していく以外にないし、またそうあるべきだろう。その覚悟が問われていることを肝に銘じてほしい。

今回の工事を絶対無事故で完了させることも重要だ。万が一にも事故が起これば、施設への不信が高まり、用地取得はさらに困難となりかねないからだ。作業員の内部被ばく防止など安全管理対策は万全か。今一度の確認を要請しておきたい。

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