eトランプ氏勝利 外交、経済の現実政策を注視

  • 2016.11.10
  • 情勢/国際

公明新聞:2016年11月10日(木)付



社会の分断が進むのか、それとも融和を取り戻せるのか。そして世界への影響は―。米国が大きな分岐点にあることを鮮明にした選挙だった。

大接戦となった米大統領選は、民主党のクリントン氏と激しく争った共和党のトランプ氏が勝利した。米国政治は内政、外交ともに大きく変化すると見られ、日本はじめ世界各国は今後、次期大統領の言動を注意深く見守ることになろう。

「既成勢力」との対決を打ち出し、移民や格差の問題で強硬姿勢を示してきたトランプ氏が勝利したことは、米国の有権者が現状に対して根深い不満を抱いていることを浮き彫りにした。それは、移民に職を奪われたと感じる白人労働者層を中心に同氏が予想を大幅に上回る支持を広げたことでもよく分かる。

その上で深刻に受け止めるべきは、選挙戦を通じて指摘されてきた米国社会の分断ではないか。

選挙戦術の面があったとはいえ、トランプ氏のように富裕層や移民、イスラム教徒などを敵視して批判することでは、米国が抱える問題の本質的な解決にはならない。そればかりか、不満や憎悪を煽りかねず、社会の分断を一層深めてしまう恐れがある。

トランプ氏は勝利宣言で一転、「分断の修復と国民の結束」を訴えた。これは共和、民主両党を挙げて取り組むべき課題であろう。

国際社会では「米国第一」を掲げた次期大統領が外交・安全保障問題で、オバマ政権のような世界の平和と繁栄に強力なリーダーシップを発揮する道を選択するのか、注目している。日米同盟の揺るぎない絆が変わるべきでないのも言うまでもない。

トランプ氏の勝利に対して、株価が大きく値を下げた東京市場をはじめ世界経済も動揺を隠さない。英国の欧州連合(EU)離脱や中国の成長鈍化など世界経済が不透明さを増す中、米国が新たな不安要因になってはなるまい。テロ対策や北朝鮮政策、地球温暖化防止など米国が国際的な連携の要となる課題は多い。

大国としての賢明なメッセージを国際社会に発信することを、トランプ氏には期待したい。

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