e「給付型奨学金」設計の論点

  • 2016.11.07
  • 生活/子育ての補助金・助成金

公明新聞:2016年11月7日(月)付



進学へ背中押せる制度に
東京大学 小林雅之教授に聞く



公明党が強力に推進している、大学生らに対する返済不要の「給付型奨学金」。政府は「2017年度予算編成過程を通じて制度内容について結論を得、実現する」方針で、今後、与党での議論も本格化する見通しだ。給付型奨学金の意義や制度設計の論点について、東京大学・大学総合教育研究センターの小林雅之教授に聞いた。


「貸与型」だけでは 低所得世帯に限界 失望招かぬ規模確保を


―給付型奨学金創設の意義は。

小林 わが国の学生への経済的支援策のうち、実質的に給付型の要素を持つのは主に授業料減免制度だが、低所得世帯にとってそれだけでは進学に踏み込めないのが実情だ。

大学や専門学校などへの進学は、授業料はもちろん、生活費も大きな問題である。高校卒業後すぐに働かなければ生活が成り立たない状況にある人もいる。そんな人が貸与型だけでは、借り入れが多額になり、返済に苦しむことになる。だから、どうしても「給付型奨学金」の創設が必要だ。

―制度設計に当たり、重要なポイントは何か。

小林 「経済的理由で進学が難しい子どもの背中を押せる制度」かどうか、ということだ。進学先の少ない地方に住む低所得世帯の子どもをどう支援するかが議論の一つの出発点になる。そうした子どもたちは、自宅から通えず進学費用がかさむ上に、学習環境が不十分で、学力が低いことも多い。成績要件を高くしてしまうと進学が難しい。

一方、大学側が単位認定を厳格化している中で、卒業できることも必要である。無条件で成績要件を外すことには疑問だ。

―給付額について、月額3万円という案が一部で報じられたが。

小林 個人的には少なすぎると思っている。進学を後押しする額なのか疑問だ。世界の例を見ても年間50万~60万円というのが望ましい。ただ、財源に限りがある中で、額を大きくすれば対象人数が減る。収入に応じて給付額に段階を設けるのも一つのアイデアだ。

―今後、制度設計の議論が進んでいくが。

小林 まず作ることが大切だという考え方もある。小さく生んで効果を検証しながら、大きく育てる。これは大事な発想だ。だが、あまりに小さいと、国民の期待が大きいだけに失望を招いてしまう。「十分な規模が必要」という世論をどれだけ形成できるかがカギを握る。

公明は教育格差是正

や奨学金拡充に熱心

―公明党に期待することは。

小林 公明党は教育の格差是正や、今回の「給付型」創設など奨学金制度の拡充に向けて、さまざまな提案を行い、熱心に取り組んでいる。給付型奨学金の制度設計は、財源も関係するので、最終的には政治決着になるだろう。「財源がないから、作りさえすればいい」といった認識から、さまざまな声が飛び交う中で、公明党には国民の期待に応える制度が必要だという主張を積極的に展開してもらいたい。

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