eいじめ認知最多 人の痛みに思い寄せる教育を

  • 2016.11.01
  • 情勢/解説

公明新聞:2016年11月1日(火)付



子どもたちのかすかな悲鳴も漏らさずキャッチし、支援の手を差し伸べたい。

文部科学省の調査によると、全国の小中高校などが認知した2015年度のいじめの件数は、22万4540件と過去最多を記録した。

「いじめの兆候を早期に把握しようとする学校現場の機運が高まってきたもの」との見方もあるが、やはり深刻な数字と受け止め、これまで以上に未然防止や相談体制の拡充に全力を挙げるべきだ。

いじめが重大な人権侵害であることは、言うまでもない。被害者の心に大きな傷を残し、場合によっては自殺など取り返しのつかない事態をも引き起こしてしまう。この点の認識をいま一度、児童・生徒や保護者、教師らの間で共有する必要があるだろう。

その意味で、学校における人権教育の充実がますます求められる。文科省の有識者会議は今回の調査結果の発表に先立ち、いじめへの対応などを定めた「いじめ防止対策推進法」の見直し論議を踏まえ、強化策の提言をまとめた。

この中で、具体的な事例を通じた実践的な取り組みの重要性を強調している。例えば、最近顕著なインターネット上でのいじめを題材に作文を書いたり、ディスカッションを行ったりすることで、他人の痛みに思いを寄せる感性を育んでほしい。家庭にあっても、命の大切さや思いやりの気持ちについて話し合うよう努めたい。

相談体制の充実も一層進める必要がある。公明党が全国に配置を進めてきたスクールカウンセラーなどの人材確保をはじめ、全国どこからでも悩みを相談できる「24時間子供SOSダイヤル」などの周知に取り組むべきだ。

学校側がいじめを把握する上で、被害者以外の児童・生徒からの情報が役立つとされるが、寄せられる情報は少ない。「教師に伝えても変わらない」「告げ口したように思われる」といった心情を踏まえた対応が求められる。

学校でのいじめは、経済格差など現代社会のひずみが子どもたちの間に現れたものとも指摘されている。いじめが発生した後に対処することも大切だが、いじめを起こさせない社会づくりに努めることは私たち大人の責任である。

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