e文字・活字文化の日 深遠で広い本の森を楽しもう

  • 2016.10.27
  • 情勢/解説

公明新聞:2016年10月27日(木)付



1冊の本との出会いが、一生の財産となる場合もある。

きょう27日は「文字・活字文化の日」だ。今年で70回目となる「読書週間」(11月9日まで)の初日でもある。読書の秋を存分に楽しみ、活字文化を振興させていきたい。

先哲・ショーペンハウアーは「古典を読む以上に精神を爽快にするものはない」と喝破した。

人間は、優れた人物の振る舞いや、その人生観に触発されて成長していく。時代や国を超えて読み継がれてきた名著には、文豪や思想家たちの選び抜かれた言葉がちりばめられている。本をめくると、古今東西の偉人たちの多様な人間像に触れることができる。その営みが、向上心や思考力、感受性、教養、価値観など人間としての土台を培っていくのではないだろうか。

特に、情報が加速度的に新陳代謝し、既存の社会秩序が揺らぐ今は、将来の見取り図を描きにくい。こうした時代こそ、歴史を踏破してきた書物から、生きるうえでの羅針盤となるヒントを探す試みが欠かせない。読書の意義は一段と重みを増すといえよう。

しかし、文化庁の世論調査によると、1カ月に1冊も本を読まない人は約48%に上る(2013年度)。02年度の調査に比べ、10ポイントも多い。デジタル機器の影響だろうか。本の魅力を知ってもらう活動を着実に広げないと、次世代の思考力や創造力の低下、ひいては人間力の衰退につながらないか心配だ。

そのカギを握るのは、主に学校と家庭になるだろうが、とりわけ学校の取り組みに期待したい。

学校図書館の設備や蔵書数、専門職員である学校司書の配置は、地域や学校によって大きな開きがある。公立図書館や他の学校図書館との連携を深め、全体の底上げを進めてほしい。

人が集まって互いにお薦めの本を書評し合い、聞き手の興味を引く度合いを競い合う「ビブリオバトル」が、全国の教育現場でも注目されている。この運動も、ぜひ広げてもらいたい。

本の世界は広くて深遠だ。まるで、森のようである。一人でも多く、この森を散策し、心豊かにできる環境を整えていきたい。

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