eコラム「北斗七星」

  • 2016.10.21
  • 情勢/社会

公明新聞:2016年10月21日(金)付



簡潔な原稿で課題やその処方箋を説くには、困難な作業が伴うものだ。「3分間のスピーチなら、少なくとも一晩は準備にかかる」。米国の第28代大統領、ウッドロウ・ウィルソンの言葉である◆ウィルソンによれば、2時間の講演なら即座に始められるが、30分の話だと、原稿を用意するのに2時間ほど必要とも。歴代の大統領で最も演説がうまかったと評されるだけに、説得力がある。外山滋比古著『ユーモアのレッスン』(中公新書)で知った◆きょう21日は「新聞週間」の最終日。1947年に愛媛新聞、翌年からは日本新聞協会が毎年10月に1週間かけ実施している行事で、68年以降は10月15日が開始日となった。この時期、いつも注視しているのが読者の投稿から選ばれる標語だ◆例えば今年の代表標語は「新聞を 開くその手で ひらく未来」。東日本大震災が発災した年は、「上を向く 力をくれた 記事がある」だった。ちなみに、今年の佳作には「声なき声 拾い集めて 光る記事」という作品も。読者恐るべし、である◆本紙の役割について、かつて井上幹事長は「社会の課題を報じ、政治を動かす」を、その一つに挙げていた。未来を開くには、読者の心に届き力となる報道が肝要だ。「簡潔は知恵の精髄」(シェイクスピア)である。浅学非才の身を省みつつ、原稿と格闘する日々だ。(田)

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