e地域の金融機関 中小零細企業の良き相談相手に

  • 2016.10.17
  • 情勢/解説

公明新聞:2016年10月15日(土)付



中小企業経営者に寄り添う形で、新しい発想による支援が進む契機にしたい。

金融庁は先月、地方銀行や信用金庫などの地域に密着した金融機関が、どのくらい中小企業の経営改善に貢献しているかを測る指標を公表した。この指標に基づいて金融機関が自ら採点し、経営改善や起業を実現した件数など約50項目を同庁に申告する。

指標を導入した狙いの一つは、金融機関に対し、不動産などの担保ばかりを重視しがちな融資姿勢の見直しを促すことにある。今後も年に1回行われる自己採点を通して、中小企業の将来性や技術力を的確に評価する力量を培っていくことが求められよう。

金融機関が地域の中小企業の資金繰りを支援する場合、融資が回収不能になることを避けるため、担保を要求することは理解できる。しかし、中小企業の大半は資金繰りに苦労を重ねながら、大手の下請けや孫請けとして事業を継続してきており、十分な担保を用意することは容易でない。そのため「技術に自信はあるが、融資を受けられずに事業の拡大を断念した」という経営者の声は少なくない。

そこで金融機関に求められるのが、担保主義に偏った支援の形ではなく、これまで以上に中小企業との対話を重視した資金繰り支援である。実際、金融庁が中小企業751社に地方金融機関との取引実態を聞いた調査では、約3割が経営上の課題や悩みを「全く相談したことがない」と回答した。

金融機関自らが中小企業の経営者の良き相談相手となり、各企業が抱える課題の解決や事業拡大に協力する中で経営改善に結び付けることができれば、融資した金融機関側の業績にも反映される。

言うまでもないことだが、全国で約380万社を数える中小企業は、たとえ従業員が数人の零細経営であっても、地域経済を支え、日本経済の屋台骨となっている。ましてや、地方創生が成長戦略の重要な柱になっている今、中小企業の発展こそ経済再生のカギであることを重視すべきではないか。

地域に精通した金融機関は地元の中小企業を後押しする役割を担っていることを、重ねて強調しておきたい。

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