e東電支援強化 復興・廃炉進展へ万全の体制を

  • 2016.10.03
  • 情勢/解説

公明新聞:2016年10月3日(月)付



事故収束と福島再生を確実に進展させる―。議論の目的はあくまで、この一点にあることを忘れてはならない。

東京電力福島第1原発(1F)の廃炉費用や東電の経営問題などを検討する「東京電力改革・1F問題委員会」が経済産業省内に設置された。

メンバーは財界人や学識者のほか、東電ホールディングス(HD)の廣瀬直己社長もオブザーバーとして加わる。近く初会合を開き、年内にも提言原案をまとめる予定だ。

「安易な東電救済」に陥らず、しかも復興と廃炉を確実にする万全の支援体制をどう築くか。知恵を出し合い、納得の結論を導き出してほしい。

議論の焦点は、膨らみ続ける廃炉費用をどう捻出するかにある。

政府と東電は当初、廃炉・汚染水対策に要する費用を2兆円と想定し、東電が原則負担する計画だった。しかし、廃炉作業は予想以上に難航し、費用は数兆円規模で増大する恐れが出てきた。

加えて、国が交付国債を発行して立て替える9兆円の損害賠償・除染費用も、5兆4000億円と見込んでいた賠償必要額が既に6兆円を超えるなど大幅不足の見通しだ。

「このまま放置すれば資金面の理由から事故収束の歩みが滞りかねない」。世耕弘成経産相がこう語り、国による廃炉支援の必要性を強調するゆえんである。

問題は、廃炉支援となれば国民に新たな負担が生じることだ。既に国民は、国費や電気料金の一部を損害賠償費用などに充てる形で、東電に資金援助している。これ以上の負担増はどこまで許されるのか。慎重な議論が欠かせない。

ポイントは3点。第1には、国民負担は可能な限り抑えること。委員会は消費者の声によく耳を澄ますことから議論を始めてほしい。

第2には、「原則東電負担」の方針は変えないこと。「はじめに東電救援ありき」は許されない。

そして第3には、東電HDの抜本的経営改革だ。電力小売りの全面自由化で同社の需要は構造的に減少している。廃炉費用を負担しながら競争にも耐えうる「ニュー東電」への脱皮なくして、事故収束も福島復興もないことを強調しておきたい。

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