eシリア内戦の再燃

  • 2016.09.26
  • 情勢/解説

公明新聞:2016年9月26日(月)付



"人道支援の停戦合意"忘れるな



シリアのアサド政権と反体制派が争う泥沼の内戦を終息させようと12日に発効した停戦合意が、崩壊の危機に直面している。
停戦は、アサド政権の後ろ盾となっているロシアと、反体制派を支援する米国が仲介して実現したものだ。
しかし、報道によると、17日に米主導の有志連合軍がアサド政権軍を誤爆し、約90人が死亡。これが契機となり、アサド政権は一方的に停戦終了を宣言し、反体制派が支配するシリア北部の都市アレッポでの攻撃を再開した。
特に、アレッポ郊外で食料や医薬品などを運ぶ国連などの車両が空爆され、人道支援活動が一時停止に追い込まれたことは重大な問題である。
米国は「ロシアもしくはアサド政権軍による攻撃」と断じ、責任を追及。ロシア側はそれを否定するという"犯人捜し"の泥仕合が続いているが、あまりにも不毛である。
何よりもまず、「停戦を回復し、人道支援を可能にさせなければならない」(潘基文・国連事務総長)。米ロが最優先ですべきことは、人道救援物資を運ぶ国連などの車両が通る幹線道路に、紛争当事者の双方が近づかないよう説得することである。
今回の停戦合意の目的は、差し迫った人道危機への対処であったことを忘れてはならない。
つまり、反体制派を追い詰めようとアサド政権軍はアレッポに続く補給路を遮断している。これにより、シリアの住民約25万人に十分な食料や電気、水が届かない状況が続いている。「人道支援を行うためには、停戦が必要だ」と訴える国連の呼び掛けに、米ロが応じたからこその停戦合意だったはずである。
今回の停戦がうまくいった場合、米ロが協力して、過激派組織「イスラム国(IS)」などの掃討作戦を開始することも注目されているが、米主導の有志連合軍の誤爆を鑑みるに、十分に連携が取れているとは言い難い。両国は協力体制のあり方をよく検討すべきだろう。
日本政府は、シリアと周辺国に、食料の供給やワクチン接種などの人道支援を国連と連携して行う方針を決めた。紛争に苦しむ住民に寄り添う支援に今後も力を入れたい。

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