e災害時の避難路

  • 2016.09.26
  • 情勢/解説

公明新聞:2016年9月24日(土)付



住民の声聞き"命の道"整備を



大災害に備えた"命の道"の整備が急がれる。

内閣府の「道路に関する世論調査」によると、大地震や豪雨などの災害発生時に自宅周辺の道路に「不安を感じる」と答えた人が53.8%にも上り、必要な対策として、「安全に避難できる避難路の整備」が44%と最も多かった。

全国各地で自然災害が相次ぐ中、住民は避難路としての道路の役割に強い関心を持っている。当然のことながら、防災対策を見直す上で最重要の視点といえよう。

避難路の整備は、東日本大震災の重要な教訓の一つでもある。震災による津波被害では、生存者の避難開始時間が平均で19分後だったのに対して、亡くなった人は21分後だった。わずか2分の差が生死を分けたのである。1分1秒でも早く安全な避難場所まで逃げられるよう避難路の整備を進めなければならない。

参考になるのが、高知県黒潮町の取り組みだ。

南海トラフ地震で最大津波高34メートルの新想定が2012年に発表されて以来、同町は「犠牲者ゼロ」を掲げて240カ所への避難路整備を急いだ。住民が早く避難できるよう高台へつなぐ避難路を何コースも作り、災害時は商用電力に頼らない誘導灯を設置するなど夜間被災を想定した対策も講じた。近くに高台がない地区は避難タワーでカバーする。

黒潮町の取り組みで忘れてならないのは、住民の声を丁寧に拾い上げていったことだ。防災地域担当を兼務する職員が町内の全61地区に張り付き、全人口の約3分の1に当たる4600人以上の住民と意見交換を重ねた。その中で、新たに避難路が必要と判断されれば従来の計画を見直すこともあった。

地域の実情に最も詳しい住民の意見に耳を傾け、整備計画に反映させることにより、避難路はその効果を最大限に発揮することができるのは言うまでもあるまい。住民の不安感も和らぐであろう。

最近は、スマートフォンを利用して避難路を案内するシステムも開発され、同町の実証実験で有効性が確認された。観光客など土地勘のない人にも役立つことから、避難路の整備と併せて広く活用してはどうか。

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