e官民合同チームと共に 福島再建へ歩む(2)

  • 2016.09.23
  • 生活/生活情報
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公明新聞:2016年9月22日(木)付



「食」を支え 帰還待つ
販路拡大、商品開発へ二人三脚
納豆製造(川俣町)



深い緑の山々の麓に映えるコスモスの白や薄紫が、秋の訪れを感じさせる福島県川俣町の山木屋地区。来年3月末の避難指示解除をめざし、除染作業員を乗せたトラックが行き交う。

区域内での宿泊が制限されたこの地で、名物の納豆の生産を再開したのは自動車部品製造会社「カミノ製作所」の神野三和子社長(62)。「食」にもこだわりを持つ夫の学さん(76)が設立した同社は、従業員が定年後も無理なく働けるようにと、地元の天然地下水を使った納豆の製造・販売を2004年に開始した。「うまみが濃厚」と好評で、東日本大震災前は月4万食を生産していた。

原発事故の影響で休業を余儀なくされたが、病と闘う学さんの「やるなら山木屋で」との思いに押され、昨年12月、納豆の生産を再開。地下水から放射性物質は検出されていないが、高性能の浄水装置や放射線量測定器も導入し、「日本一安全な納豆」をめざす。

再スタート直後から足繁くカミノ製作所に通ったのが、官民合同チームだ。風評被害も色濃く売り上げが最盛期の4分の1に満たない中、最大の課題は販路拡大と商品の魅力アップだった。「不安いっぱいで、一人だと挫折していたかも」という神野社長を、渡辺敬範さんらコンサルタントが二人三脚で支えた。

経営のプロのアドバイスを受け、商品を売り込むパンフレットは間もなく完成する。「福島の生産者の意欲が高まれば」と、県産大豆を使った新商品開発も大詰めを迎えており、12月の販売開始が見えてきた。

「今はワクワクした気持ち」と神野社長。「川俣での食品づくりが皆さんの希望になれば」。そう語る視線の先には、来春、大好きな山木屋への"里帰り"を喜ぶ人たちの姿が浮かんでいる。

官民合同チームの支援は暮らしに欠かせない「食」の最前線にも及ぶ。自身の生活と福島の再生へ懸命に汗を流す人たちに寄り添い続け、住民の帰還を待つ。

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