e2018年度から 通級指導高校に導入

  • 2016.09.20
  • 情勢/解説

公明新聞:2016年9月17日(土)付



言語障がい、発達障がいなどを抱えていても程度が軽く、通常学級に在籍する子どもたちを対象に、小・中学校で実施されている通級指導が、2018年度から高校にも導入される。保護者や学校関係者から期待の声が上がる一方、導入への課題が少なくないという。


自立と社会参加を支援


通常学級に在籍しながら障がいに応じた指導

東京都内に住む黒木恵子さん(仮名)が、息子・進一君(仮名)の異変に気付いたのは7年前。小学5年生の進一君が夏休み明けから遅刻を頻繁に繰り返すようになった。朝、起きられなくなり、目が覚めても「体がだるくて動かない」と訴えるようになったのだ。

もともと病弱だったが、医師の診断を受けると、自律神経が正常に働かず、体や脳の血流が低下する「起立性調節障がい」だと分かった。結局、不登校になってしまった。

中学校に入っても状況は改善せず、3年生になって発達障がいと診断された。今は不登校や中途退学者を多く受け入れる定時制の公立高校に通っている。

恵子さんは「通級指導の存在を知ったのは息子が高校生になってから。もし、小・中学校で受けていたら、高校に導入されていたら、進路選択の幅はもっと広がっていたのに......」と語る。

現在、小・中学校では、障がいの有無や程度によって、通常学級、通級指導、特別支援学級、さらに特別支援学校(小学部・中学部)といった多様な学びの場が整備されている。

通級指導は、全国の公立小・中学校で9万270人が受けている(2015年度=グラフ参照)。少子化にかかわらず、年々右肩上がりに。注意欠陥多動性障がい(ADHD)や学習障がい(LD)などの発達障がいが06年度から対象に加わり、大きく押し上げている。

ところが現状では、中学卒業後の進学先は、主として通常学級か特別支援学校(高等部)に限られる。進一君が通うようなユニークな高校は多くない。

「通級指導が小学校から高校まで継続的に実施できる意義は大きい」。埼玉県特別支援教育研究会会長を務める永妻恒男・さいたま市立大宮南中学校校長は、高校での通級指導導入について、こう期待を寄せる。

永妻校長によると、一般的に学年が上がるにつれ、落ち着きのなさなどの行動面の課題は解消へと向かうことが多い半面、筋道を立てて話せなかったり、指示に従って課題をやり遂げられなかったりする学習面の困難を抱える生徒が増加傾向にあるという。


浮島、新妻両氏が試行授業を視察

選択科目に位置付け生徒の抵抗感に配慮

文部科学省は、18年度の導入に向けた課題を探るため、全国22の公立高校を研究指定校にし、通級指導を試行している。

公明党文科部会の浮島智子部会長(衆院議員)と新妻秀規部会長代理(参院議員)は今月14日、その一つである神奈川県内の高校を視察した。

この日の授業内容は、夏休み中に行ったインターンシップ(職業体験)の報告と企業への礼状の作成だった。参加した生徒が自分だけが学級から離れたり、周囲の目が気になったりして通級指導に抵抗感を持つことがないよう、他の一般生徒も教室を移動する選択科目の一つに位置付け、配慮していた。

それぞれの生徒に担当教員が付き、「仕事の内容は?」「自分がよくできたこと、自分に足りなかったことは何?」などと尋ね、生徒の言葉をじっくり引き出しては具体的にほめ、礼状を完成させていった。

視察後の意見交換の場で担当教員らから「授業内容は、特別支援学校のノウハウ(手法)を参考にしつつ、自校の特色をどう出すかに苦心している」「対象となる生徒について、国に明確な基準を示してほしい」などの声が寄せられた。

浮島さんらは「通級指導導入は公明党が一貫して訴えてきたこと。多様な学びを通じて、子どもたちの可能性を引き出していく重要な取り組みだ。現場の皆さんの要望を一つ一つ実現していくため、全力で取り組んでいきたい」と語っていた。


通級指導
大部分の授業を通常学級で受けながら、必要に応じて別に設けられた学級で自立と社会参加を促す特別な指導を受けること。1993年度に小・中学校で始まった。(1)児童・生徒が在籍する学校で指導を受ける「自校通級」(2)近隣の小・中学校や特別支援学校などに通う「他校通級」(3)自校に巡回してくる他校の教員から受ける「巡回指導」――の3形態がある。

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