e高齢者施設の避難計画 "極端な気象"への備えを急げ

  • 2016.09.15
  • 情勢/解説

公明新聞:2016年9月15日(木)付



豪雨などによる災害時に自力で避難するのが難しい要配慮者を、どう守るのか。必要な点検と対策を急ぎたい。

台風10号の豪雨で岩手県岩泉町の認知症高齢者グループホームで9人が亡くなったことを受け、厚生労働省は高齢者施設の避難計画の全国調査に乗り出した。

岩泉町の施設では、火災時の備えはあっても水害時の避難計画がなく、避難訓練も行っていなかったという。このため、厚労省は全国調査の中で、災害時の指揮系統や関係機関との連携体制、避難場所などが計画に盛り込まれているか、年内に点検するよう自治体に求めている。

高齢者施設には要配慮者が多いだけに、災害時の対応にはさまざまな課題がある。

寝たきりの入所者を1人避難させるだけでも複数の職員が関わらなければならない。全員避難には相当な時間と労力が必要だ。また、「認知症の高齢者は知らない場所に行くとパニックになることがある」として避難の決断が難しいとの専門家の指摘もある。

だからこそ普段の備えが重要だ。施設職員だけで避難させるのが難しければ、自治体や地域住民との協力態勢を、あらかじめ築いておくことが欠かせない。避難訓練についても、全国の施設で確実に行われるよう促すべきだろう。

本来、異常気象は30年に1回以下しか起こらない現象のことを言う。しかし、過去に例のない"極端な気象"が頻発する中では、それは「異常」とは言い切れず、起こり得る災害との前提で対策を検討しておくべきではないか。

例えば、避難のタイミングもその一つだろう。政府は、避難勧告などを早めに発令するよう自治体に通知している。最近は、天候の変化や河川の増水などが急激に起こり甚大な被害を招いている。施設側には、自治体の判断を待つだけでなく、独自に避難を決断する覚悟が求められよう。

近年は、猛暑や豪雨、暴風といった極端気象と地球温暖化の関係を指摘する研究報告が相次いでいる。気温が上がり大気中の水蒸気量が増えるにつれて極端気象は起きやすくなるとされるからだ。

温暖化は今後も続くと見られている。極端気象を「想定外」にしてはならない。

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