eコラム「北斗七星」

  • 2016.09.08
  • 情勢/社会

公明新聞:2016年9月8日(木)付



今年5月に国内最高齢の69歳で死んだアジアゾウ「はな子」のお別れ会が3日、井の頭自然文化園(東京都武蔵野市)で開かれ、北斗子も足を運んだ◆1947年にタイで生まれたはな子は、戦争で傷ついた子どもたちの心を癒やすため、49年に来日。54年には東京・上野動物園から同文化園に移り、独り暮らしに。83年には歯が1本だけになったが、飼育係らが専用の機械で細断した餌を与え、はな子の「食」を支え続けた◆老いても懸命に生きるはな子の姿は、子どもだけでなく、大人たちも勇気づけた。そんな生涯を写真や記事、遊び道具だったタイヤなどの展示品で振り返る特設展「アジアゾウはな子の69年」が、同文化園で10月末まで開かれている◆日本動物園水族館協会によると、日本の動物園のゾウは87年の164頭をピークに減り続けている。高齢化や繁殖の難しさに加え、野生ゾウの絶滅危惧で国際取引が厳しくなっているためだ◆動物園の役割も、単に珍しい動物の展示から、野生動物の保護や豊かな生態系を守っていく大切さなどを伝える環境教育の場へと変わりつつある。はな子は生涯の大部分を独りで生きたが、動物園のゾウは今、野生本来の生態を再現する群れでの飼育が基本だ。そうした変化を肌で感じ取りに、たまには動物園に行ってみたい。(翼)

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