e熊本地震 被災地の夏を追う

  • 2016.08.29
  • 情勢/社会
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公明新聞:2016年8月29日(月)付



観光産業
「ふっこう割」再建後押し
風評被害払しょくへ 正確な情報発信重要



「観光産業が元気になることが、被災地復興への大きな原動力になるはず。たくさんの方々に熊本を訪れてもらいたい」。こう熱く語るのは、熊本県南阿蘇村にある健康レジャー施設「阿蘇ファームランド」の森山千鶴営業本部支配人だ。

阿蘇の雄大な山々に囲まれ、マグマを熱源とする火山温泉や大自然を感じながら遊べる運動場などが自慢の同施設。4月16日の本震で、レストラン棟や敷地内の通路が損壊するなどして休業を余儀なくされた。

しかし、無傷だった発泡スチロール製の宿泊施設「ドームハウス」を被災村民の避難所として提供する一方で、再開準備を急ピッチで進め、ようやく今月1日からの一般営業にこぎつけた。宿泊客を出迎えながら、森山支配人は「夏は私たちにとって一番の稼ぎ時。『阿蘇は大丈夫だ』と発信していきたい」と語る。国内外から年間400万人超が訪れる"人気スポット"の復活をめざす。

地震から4カ月半。熊本県内の観光地では、震災前とほぼ変わらぬ形で宿泊客を出迎える旅館やホテルも多い。だが、一度遠のいた客足を取り戻すのは容易ではない。こうした中、観光支援へ公明党が推進し実現した、九州旅行の助成制度「ふっこう割」に関係者の期待は大きい。

7月20日から熊本県が発売した、ふっこう割「熊本宿泊券」21万枚はわずか2日間で完売となった。これに対し、県商工観光労働部の西川明之主幹は「熊本県では、発災から約1カ月間で宿泊キャンセルは33万人に上り、観光事業者の多くが苦境に立たされた。今後、ふっこう割の恩恵が広く及ぶようになれば、風評被害克服への道筋もおのずと見えるはず」と分析する。

ふっこう割の効果がいち早く表れ始めているのが大分県だ。国内有数の温泉地として知られる別府市にある人気施設「杉乃井ホテル」は、地震で目立った被害はなかったものの、宿泊キャンセルが続出、その数は約8万人に上った。しかし、ふっこう割が追い風となり7、8月の宿泊客数は例年並みまで回復したという。ホテルの広報担当者は、「割引宿泊券の発売直後から予約が殺到した。この勢いで震災前のにぎわいを取り戻したい」と意気込んでいる。

また、7月中旬から始まった九州の高速道路が定額で乗り放題となる「九州観光周遊ドライブパス」(12月18日まで)の利用も9万件を超え、九州の観光を大きく後押ししている。

被災地では誘客へ新企画を催すなど、懸命な努力を重ねている。復活の兆しが見え始めた今、風評被害の払しょくへ、より正確な情報発信が求められている。(おわり)

=熊本地震取材班

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