e第4次産業革命

  • 2016.08.22
  • 情勢/テクノロジー

公明新聞:2016年8月20日(土)付



「成長」の現場から ~日本再興戦略2016~



自公連立政権の経済成長戦略として、公明党の提言も踏まえ策定された「日本再興戦略2016」。希望を生み出す強い経済で、国内総生産(GDP)600兆円の実現をめざす。官民で挑む成長産業創出のプロジェクトの現場を追っていく。今回のテーマは「第4次産業革命」。(随時掲載)


「無人自動走行」実現へ加速


高速道路に入り、ハンドル脇のレバーを引くと、自動走行が始まった。周囲の車両や交通標識を車載カメラなどが把握。速度の調整をスムーズに行い、カーブでは、ハンドルが勝手に動いて滑らかに曲がってみせた。渋滞時の操作も不要だ。精緻で安定した走行に、人が運転する以上の安心感を覚えた。

試乗したのは、米電気自動車メーカー、テスラ・モーターズの市販車。加速・操舵・制動のうち複数の操作を一度にシステムが行う。このレベルの「自動運転車」は、すでに海外メーカーが実用化していた。

後を追う国内メーカーは、日産自動車がいよいよ今月下旬、米市販車と同等レベルのミニバンの販売を開始。トヨタ自動車は2020年ごろに、自動車専用道路での自動走行が可能な自動車の実用化をめざしている。

世界中の関心が向く、自動運転技術。政府も「将来性の高い重要分野」と位置付け、日本再興戦略で「無人自動走行を含む自動走行の実現」に焦点を当てた。20年までに限定地域での無人自動走行による移動サービスなどを実現させ、物流の改善や交通事故の減少、さらには、運転が困難な高齢者や障がい者などの移動支援をめざす方針だ。

その実現には、安全基準や道路交通法の適用のあり方などの課題も立ちはだかる。国は現在、自動走行に必要な制度やインフラの整備、立体地図の実用化に向けた準備を加速させている。成功の鍵を握るのは、こうした官民の協調だ。"オールジャパン"での巻き返しは始まったばかりだ。



ものづくり変える「IoT」


帰宅前に室内を快適な温度に設定できるエアコンや、外出先から庫内を確認できる冷蔵庫......。製品自体がインターネットにつながることができるIoT製品が、都内の家電量販店の特設コーナーに並べられていた。

IoT機器が次々に誕生している。スマートフォンからの遠隔操作だけでなく、製品購入後もインターネットを通じてサービスが提供されるなど、新たな価値を生み出すイノベーション(技術革新)が日進月歩で展開。IoTによる変革の波はさらに、ものづくりの現場にも及んでいる。

熊本市に本社を置くシタテル株式会社は、IoTを活用して130を超える国内の縫製・加工工場をネットワーク化し、顧客と製造現場を橋渡しするシステムを開発。多くの中間業者が介在していた衣服生産における従来の産業構造を転換し、「短納期・少量生産」を実現した。同社の河野秀和代表取締役は、「世界の衣服生産のインフラを形成していきたい」と強気だ。

IoTに活路を見いだそうとする動きは、各地の中小企業にも広がり始めている。

静岡県では、地域の企業や大学、産業支援機関、行政がタッグを組み、「静岡県IoT活用研究会」をスタートさせた。

今月5日に静岡市内で開催したセミナーでは、普段、顔を合わせることのない中小製造業者らが同じテーブルに着き、IoT活用による経営力の向上やビジネス創出に向けて活発に意見を交わした。こうした姿に、主催した静岡県産業振興財団・革新企業支援チームの長井善郎氏も変革への空気を感じ取ったという。

「まずは受け身から攻めの姿勢に転じること。IoTが必要かどうかはそれからだ」。同研究会を後押しする法政大学の西岡靖之教授はセミナーの参加者にそう念を押しつつ、「アイデアさえあれば変革はできる。知恵と度胸と、そして多少の運が必要だ」と励ました。

国は、こうした中小企業の革新的ものづくりやIoT導入について、専門家の派遣などで積極的に支援していく方針だ。



【第4次産業革命】


「蒸気機関」「電力」「コンピューター」に続く、モノのインターネット(IoT)やビッグデータ、ロボット、人工知能(AI)などによる技術革新。IoTやビッグデータがもたらすトータルの経済価値は、日本経済の4倍もの規模になると試算される。政府は第4次産業革命の実現を「成長戦略第2ステージの鍵」と位置付け、新たな有望成長市場の創出により、2020年までに約30兆円の付加価値をつくり出すとしている。

月別アーカイブ

iこのページの先頭へ