e被災市町村への支援 不足する職員。多様な施策講じよ

  • 2016.08.10
  • 情勢/解説

公明新聞:2016年8月10日(水)付



集中豪雨で河川の護岸がいくつも崩れたのに、復旧工事が進まない―。こうした事態が今、全国の市町村で問題になりつつある。自治体の緊縮財政や市町村合併による職員数削減などの影響を受け、工事を担当する土木関係職員が減少傾向にあるからだ。実際、町の約6割は職員数が5人に満たず、村の約5割はいないという状況だ。

被災時の市町村には、河川や道路などの状況調査と応急措置をはじめ、被災地点の測量、国に申請する復旧事業費の査定(災害査定)などを迅速に処理していくことが求められるが、十分な人員とは言えない。災害大国である日本にとって深刻な課題の一つだ。

そこで国土交通省は、昨年の関東・東北豪雨や今年4月の熊本地震を踏まえ、近い将来に予想される南海トラフ地震などの大規模災害を想定し、被災市町村への支援策を協議する有識者懇談会を設置、先月下旬に初会合を開催した。国の支援のあり方などについて、年内に中間取りまとめをする方針だ。市町村側の期待も大きく、議論の中身を注視していきたい。

論点の一つとして、国交省職員による緊急災害対策派遣隊の活用促進が挙げられる。自治体に代わり被害状況の調査などを行う派遣隊は、熊本地震でも全国の地方整備局などから現地入りし、短期間で激甚災害の指定を受けることに貢献した。

ただ、派遣隊の存在や活動内容が市町村側に浸透していない状況も明らかになっている。周知を徹底することで、効果的な運用が期待できよう。

また、災害査定の簡素化や市町村職員の研修の充実も、必要ではないか。市町村単独では準備・管理が難しい衛星通信車などについては、国からの円滑な提供が可能になれば、現地情報を素早く集める上で非常に役に立つ。

市町村が独自に地元の土木関係業者と災害協定を結び、災害時の迅速な対応に協力してもらう試みも重要だろう。こうした多様な施策を駆使し、職員不足を補ってほしい。

公明党は、さまざまな災害において、国や地方の議員が現場に飛び込み、復旧・復興に尽くしてきた。懇談会の提言も、どこまでも現場の声に応えたものにしてもらいたい。

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