e理工系人材 第4次産業革命の担い手育てよ

  • 2016.08.05
  • 情勢/解説

公明新聞:2016年8月5日(金)付



世界は今、第4次産業革命を迎えたといわれている。「蒸気機関」「電力」「IT」が、科学技術イノベーション(新しい技術や考え方を取り入れることによる社会変革)を先導した時代を経て、今後はAI(人工知能)やIoT(モノのインターネット)が主役になるとされ、技術開発に向けた各国間の競争は激しさを増している。

こうした中で日本も、科学技術イノベーションに力を注ぐべきことは言うまでもない。新時代を先取りできるかどうかは、今後の日本の針路に大きく影響するからだ。

ところが、その担い手である理工系の人材が不足している。子どもの頃からの「算数嫌い」や「理科嫌い」に始まり、大学では「理系離れ」の傾向が続いている。このままでは、日本は国際競争から取り残される恐れがある。このため経済産業省と文部科学省は2日、産業界、教育機関、政府が協力して取り組むべき行動計画を取りまとめた。

具体策としては「面白い理科の実験ができる教員を増やす」「企業が理工系人材に求める能力を分野ごとに『見える化』する」「産学共同研究に参加した博士課程の学生を経済的に支援する」などが並んだ。いずれも「理科離れ」や、産業界と教育機関のミスマッチを防ぎ、量と質の両面から人材育成を進める狙いが明確であり、妥当といえるのではないか。

一方、産業界の要望に当てはまる人材を供給するだけでは、イノベーションは期待できない。日本でイノベーションが起きにくい理由として指摘されるのが「出る杭は打たれる」という風土だ。特に大企業ほど、既存の成功モデルから脱却できず、新たな挑戦に及び腰となる傾向にある。個々の意欲と能力が生きる体制を築かなければならない。

一つの方法として、技術者や研究者の起業支援が考えられる。ベンチャー企業ならば、規模が小さい分だけ小回りが利き、新たな技術で思い切った事業が行える。起業をめざす人と支援者を結び付ける場を設けたり、成功事例を発信するなど、起業のハードルを下げる工夫も重要になる。

産学官は、今まで以上に連携を強化して、こうした取り組みを進めてもらいたい。

月別アーカイブ

iこのページの先頭へ