e熊本地震 被災地の夏を追う

  • 2016.08.01
  • 情勢/社会
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公明新聞:2016年7月30日(土)付



仮設入居待ち続ける日々
長引く避難生活



「いつになったら避難所から出られるのか......」。熊本県益城町の広安西小学校に避難している渡辺京子さん(42)は、見通しの立たない生活に悩む毎日だ。

熊本地震で5500戸を超す住宅が全半壊の被害を受けた益城町では、現在も約1200人が避難生活を余儀なくされている。

渡辺さんは、娘の紗凪ちゃん(7)と2人で暮らすシングルマザー。賃貸の自宅アパートは全壊し、これまでに3カ所の避難所を転々とした。地震から3カ月以上がたち、避難所生活にはだいぶ慣れたが、布1枚で仕切られただけの畳2畳分のスペースは、親子2人には少し手狭だ。正直、集団生活ゆえの不自由さに息が詰まりそうになるときもある。


子どもの体調に変化細かな支援なお必要


「地震を思い出すのか、夜になると不安になって私のそばから離れないんです」。震災後、紗凪ちゃんの体調に変化が表れた。授業中も落ち着きがなくなり、教室から飛び出してしまうこともあった。それだけに「できる限り早く仮設住宅に移りたい」と思う。娘への負担を考えると同じ校区内がベスト。しかし、これまで2回あった仮設住宅の抽選は、いずれも落選した。28日から始まった第3次募集に望みを託す一方で、熊本市内でみなし仮設住宅を探すことも視野に入れ始めている。

現在の熊本県内の避難者数は、12市町村で3479人(29日時点)。その多くは、家が損壊し、行き場をなくした人たちだ。このため県内では、急ピッチで仮設住宅の建設が進む。

こうした中、益城町では1285戸の仮設住宅を整備。1次募集で820戸の入居者が決定。2次募集では、465戸に698件の応募があった。現在行われている3次募集はキャンセル分の32戸にすぎない。同町は増設を予定するが、住宅被害の再判定結果によっては希望者が増える可能性もあり、必要戸数を割り出せずにいる。その上、「土地の選定にも苦慮している」(水口清・町都市計画課住まい支援係長)状況だ。

一方、避難所には入らずに生活する被災者もいる。自宅が全壊した松本昭代さん(72)は、近くに住む娘の元に身を寄せる。仮設への応募も考えたが、「自分より大変な人がいる」と思いとどまった。「50年暮らした土地を離れられない」と語る松本さんだが、「顔見知りもいなくなってしまった」と肩を落とした。

住まいを確保できず、生活再建へ新たな一歩を踏み出せない人たちがいる。被災者に寄り添った、個別の相談など、細かな支援がなお求められている。

熊本地震から3カ月が過ぎ、初めて迎えた夏。復興に向けて歩み始めた被災地の今を追う(随時掲載)。=熊本地震取材班

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