e駅のホームドア 利用者マナーも安全に不可欠

  • 2016.07.25
  • 情勢/解説

公明新聞:2016年7月23日(土)付



千葉県柏市で先月、女性が駅のホームから転落して電車にはねられ、死亡する事故があった。同様の事故が後を絶たない中、国土交通省は転落事故を防ぐため、各鉄道事業者と連携してホームドアの設置を進めている。東京五輪・パラリンピックが開催される2020年までに全国約9500駅のうち主要800駅への設置を終える予定だ。痛ましい事故を未然に防ぐため、ホームドアの普及を急ぎたい。

ただ、ホームドアの設置拡大には課題もある。

例えば、鉄道各社の相互乗り入れが増えたことにより、乗降扉の位置や数が異なる車両への対応が迫られている。このため、大手機械メーカーが、既にさまざまなタイプの車両に対応できる新型ホームドアを開発し、今秋から首都圏の私鉄で実証実験が行われるという。

また、一駅当たり数億から十数億円という設置費用についても、低コスト化が進んでいる。こうした民間の取り組みにも期待したい。

ホームからの転落事故というと、従来は酔っ払った人や障がい者、高齢者などに多いとされてきた。しかし最近では、歩きながらスマートフォン(スマホ)の画面を見る「歩きスマホ」が原因でホームから転落する事故が増え、ゲームの操作に夢中になった子どもが列車と接触する事故も発生している。国交省によると、14年度は「歩きスマホ」やゲームなどが引き金となった列車との接触事故が227件発生し、うち34人が亡くなっている。消防や各鉄道会社が「歩きスマホ」への注意喚起を積極的に行っているにもかかわらずである。

「歩きスマホ」中の視野は、通常の約20分の1まで狭まってしまうといわれる。「歩きスマホ」は自分が被害者となるだけでなく、自分とぶつかった相手が転落するケースもある。注意喚起をスローガンにとどめず、厳に慎まなければならない。

ホームからの転落防止対策としてホームドアの設置を進めることはもちろん必要だが、併せて、駅を利用する一人一人が最低限のマナーを守ることも、駅の安全性を確保する上で欠かせないことを、改めて強調しておきたい。

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